ゆずきよ

ケイコ 目を澄ませてのゆずきよのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
3.6
amazonプライム独占配信との事。
岸井ゆきの主演の実話を元に構成されている映画。

物語は、聴覚に障害のあるプロボクサーの女性の日常と変化を描く。
基本的には淡々と日常を描いた作品で、中盤の展開までは特に大きな事柄は無い。
聴こえないことによるちょっとした不都合であったり、生きづらさの描き方が見事で、手話の表現もわかりやすい。
特にコロナ禍に置いてマスクを付けているのは、聴覚障害のある方には死活問題だよね。
ただ会話も少ないし、説明もほとんど無いので、関係性だとかの読み取りは難しい。
同居しているのも弟だろうとは思っていたけれど、確証を持つまで時間がかかった。
私はこの手の話は嫌いじゃ無いので、終盤まで集中して観る事は出来たが、本当に展開は少ないので観る人によっては飽きちゃうかも。
最後の方の山場に関しても、そりゃ映画やドラマじゃ無いんだからそうなるよね。という感じ。まぁ一応この作品も映画っちゃ映画なんですけど。

登場人物は思いやりがあって良い人が多い印象。
主人公の気持ちを汲み取ってくれたり、過度に干渉しなかったり。
どうしても障害があるってなるとそこに目が行きがちで、一人の人間としての意識が下がってしまいます。
中盤で、手話を始めたという人の対比があるけれど、相手に悪気が無いのは分かっていても状況により困らせるだけになっちゃうんだよね。
それが何のためなのかという部分が大事なのだと思う。
「あなたの為に」が先行してしまうとそれはもう健全な関係では無い。
だって近視に悩んでるって人がいたって、わざわざ眼鏡を買ってあげないでしょう。

それにしても、岸井ゆきのは本当に良い役者さんだと思います。
変に古参ぶりたくは無いけれど、某ロックバンドのMVに出ていた時に、なんて良い表情をする役者さんなのだろうと思っていました。
今作でも役作りから演技から素晴らしかったです。
それと、この作品の良いところは音。
題は目を澄ませてだけれど、本当に生活音やミット打ちの音で、世界にはこれほど音が溢れているのかと実感します。
是非、耳が聞こえる内は、耳も澄ませてみて下さい。
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