MasaichiYaguchi

たまらん坂のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

たまらん坂(2019年製作の映画)
3.5
小谷忠典監督が、武蔵野大学・武蔵野文学館協力のもと、作家・黒井千次さんの短編集を元にモノクロ映像で撮りあげた長編劇映画は、恰も登場人物たちと共に文学の世界を“読書体験”したかのようで、改めて「たまらん坂」を含め、緑豊かな学園都市の国立市の魅力に浸れます。
毎年、母の命日には父と墓参りに来ていた女子大生ひな子だったが、今年は小雨の降る中、一人きりで母の墓前に立つ。
彼女は墓に既にコスモスの花が供えられていることに気付くが、母が亡くなってから17年、祖父母も以前に他界しており、他に墓参に来る人もいない筈なのにと不審に思う。
国立市は私の自宅から30分以内に行ける所で、今の季節だと、国立駅から南武線の谷保駅まで真直ぐ「大学通り」と呼ばれる大通りが通っていて、そこには桜並木が立ち並び、多くの市民が訪れて賑わっている。
ここから、ひな子の母を巡る記憶と、彼女の「たまらん坂」の由緒を探る心の旅が幕を開ける。
全編にわたるモノクローム映像は静謐でエモ―ショナル、そして随所に挿入される同様にモノクロームのアニメーションが温かな印象を与える。
更に、RCサクセションの名曲「ロックン・ロール・ショー」「多摩蘭坂」も劇中に登場し、モノクロームの作品の世界観に彩りを与えています。
心の旅の果てに、ひな子は母をはじめとする家族について、そして「たまらん坂」について何を見出すのか?