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この子は邪悪の都部のレビュー・感想・評価

この子は邪悪(2022年製作の映画)
1.6
本作は端的に『脚本が酷い』の一言に尽きて、不気味な雰囲気を伴ったヒューマンホラーかと思えば肩透かしもいいところの三流スリラーである。
序盤の段階で作品の展開は読める上に、それを成立させる為の作品内の理屈という名の種明かしは粗末で杜撰で幼稚で腹立たしく、よくこれで100分近い映画の物語として通ると思ったなと思わず悪態を付かずにはいられない出来だ。

(ネタバレを避けると)
本作の某人物の『手口』は脚本に対して便利すぎるし、それ故にそれが多用される展開はこの荒唐無稽な絵空事を物語として成立させる為の技巧すらも放棄していて、悪い意味で御都合主義的過ぎる。本作のリアリティラインは曖昧模糊としているので『アレ』の存在を許容出来るか否かはさておき、これといった工夫もなく似たような絵面を連続させる愚直な一辺倒ぶりは頂けません。

加えて話の見せ方にも工夫がなく、伏線らしい見せ方がされてる物は何の捻りもなく伏線ですし、怪しい人や物は本当に怪しいというこの飾り気のなさ。黙示録的な負のカタルシスを帯びた作品ならば、そうした直接的な示唆は物語に有機的に機能しますが、少なくとも本作はそんな作品ではありません。単純に見せ方が安っぽいので、後に待ち構える悲劇への緊張感が物語を牽引することはまるで出来ていないと言えます。

100分程度の映画なのに冗長に感じるのは同じ意味を持つ場面の繰り返しが多いからのように思えて、シーンがかなり刻まれてるようで全然話が進まず、かと思えば情報の提示場面では足早にと、全体的なバランスの悪さも目立ちます。
この繰り返しがもたらす冗長さは終盤の真相発覚パートにも通じるのですが、やってる事は大仰で衝撃的なはずなのにダラダラとした進行により、まるで盛り上がらないクライマックスになってるのがよろしくない。挙句の果てにしたり顔を決めてそうなあのオチも、作品が適当に一丁噛みした社会問題とこれといって関係のない表面的な後味の悪さだけを優先したような着地点そのもので非常にムカつきました。
また女性陣はともかく、大西流星と玉木宏の演技が終始上滑りしていて物語上で浮いてるのがだいぶ酷い。両名共に重要な役割を担ってるだけに、作品の品質をこの点でも損なってるように思いました。
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