ベンジャミンサムナー

小さき麦の花のベンジャミンサムナーのネタバレレビュー・内容・結末

小さき麦の花(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 ポスターの感じからして「自然の中でのスローライフを美化するような作品だったらどうしよう」という懸念があったけど、劇中で「自然は平等だ」という台詞があるように、フラットな視点で描かれてるのが良かった。

 最終的にクイイン(ハン・チン)の命を奪うのも自然(川)だし。
 クイインが川の中で丸太に摑まりながらヨウティエ(ウー・レンリン)に背中を掻いてもらう場面が前フリになっている。

 それに、作物を育てたり、粘土でレンガを作って一から家を建てる過程をじっくり見せることで、静かではあるけどスローライフどころかやることが滅茶苦茶多い暮らしなのが伝わってくる。
 
 それらの作業を朝から晩まで二人で協力して行う必要があるので、現代の一般的な夫婦以上に強い結び付きが生まれる。

 一匹の魚を二人で食べるのはフード理論的な演出。

 最初は何を考えてるのか分からないけど、次第に生き生きした表情になっていく二人の演技のグラデーションも素晴らしい。

 『ブルーバレンタイン』や『花束みたいな恋をした』のように、結婚することで夫婦間に距離ができてしまう作品とは対照的。

 自然がどうこうということ以上に、夫婦のあり方について違う角度から考えさせられる作品。