レインシンガー

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュのレインシンガーのレビュー・感想・評価

3.0
政治的メッセージを含むエンタテインメント映画は大好き。
大好きなだけに、ちょっと点が辛くなるかもしれない。

話というか、出来事はすごく重要、かつ今現在の日本でも同様の出来事(言いがかりで拘留されて、延々と取り調べられる)があって、怒りをこめて共感を持って見つめるに値する内容だった。
ちょっとおっちょこちょいな行動が目立つ息子だが、絶対に政治犯ではないし、ましてやテロリストではあり得ないのに、米軍に捕まって、悪名高いグァンタナモで拘留され取り調べられている!なんとかしなきゃと、ドイツに住むトルコ人のお母さんが、人権派の弁護士を口説き落として、一緒に争う。

がんばれ、がんばれ、と、過去の出来事で、しかもなんとか息子が救われることも分かってるのだが、応援してみてしまう。
ラストも含めて、苦みもあるが、全体のコミカル味も含めて、いい映画と位置づけていいだろうと思う。

だけど、映画としての中途半端さがやはり観る方の足を引っ張っている気がする。
つまり「コメディに寄せるのか」(多少は寄ってる)「シリアスに追究するのか」(ところどころはもちろんシリアスだが)「争いの物語なのか」(争ってはいるのはもちろんだが)定まっていない映画ということになる。

特に「VSジョージ・ブッシュ」なのだから、ブッシュ自身が出てこないまでも、「なぜ捕まっているのか」「なぜ長いこと拘束されているのか」「それが不法なのか適法なのか」「どんな裁判経過=証言と証拠と弁護側の主張」などが描かれないのでは、ヒロイン自身が客席におかれて(事実そうなのだろうけど)いる状態でやきもきするのを、さらに遠い客席からただ観てるだけになってしまい、モヤモヤすることおびただしい。
ていねいに経過を描いた本でもドキュメンタリーでも触れたいと感じた一本。
レインシンガー

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