レインシンガー

マッドマックス:フュリオサのレインシンガーのレビュー・感想・評価

4.7
前作に比べて今一では?的な批評や感想をいくつか見聞きしたので、多少不安を持ちながら劇場に向かった。
確かに想定よりも観客の入りも少ないではないか。(全米の興収も今一伸び悩んでいるとのこと。)

しかし、始まっちまったら、そんな不安はかけらも思い出さなかった。全篇これクライマックスである。
冒頭、少女時代のフュリオサがバイカー軍団にさらわれる。これは予告編でみた通り。しかし、そこから母たちによる追跡と反撃が始まり、続く。いったん終わるかとみせて、また続く。ここまでか、と思わせておいて、さらに続くのだ。
このいい意味での「しつこさ」。これこそが本作を、凡百のアクション映画から屹立させていると思う。

そう、大傑作である前作が、ほとんど止まらずに走り続け戦い続ける人々の姿を全篇クライマックスとして活写し続けたように、今回は確かに少女期から大人期まで、あえて言ってしまえば前作の始まりまで、長いスパンの物語であるが、とにかく止まらない。走り続け、戦い続け、あらがい続け、破壊し続ける。
止まらないアクション、今回もそのビートは継続している。
こうやって書いていても、またすぐ観に行きたくてたまらなくなるくらいの躍動感と興奮が全篇にわたって貫かれている。

少女期を演じたアリーラ・ブラウンも、実にいい面魂をしていて、しかも美しいのだが、彼女がいつの間にかアニャ・テイラー・ジョイに変わったかわかりきらないくらい全篇スピード感がある。
(まあ、これは私が不注意なせいか・・)
たしかにシャーリーズ・セロンに比べて、ゴツさは足りないかもしれないが、ぶすっとした表情と、誰しも感じるであろう眼力の強さは、それを十分補っているし、多少若く弱さを感じさせなくもない分だけ、愛おしいキャラクターと感じられる部分にもなっている。

少しだけ残念なのは、前作でのマックスの立ち位置にいることになるジャックという好漢の存在感というかキャラ立ちというか、それが少し足りないかなあ、と思わないでもないが、その結果が、前作(つまり未来)で、少しずつフュリオサがマックスに心を開いていく過程につながるのだろうとも思う。

とにかく全篇「そうくるのか!」と叫びたくなるようなアクション上の工夫に満ちた画づくりが心を奪う。
次は10年と言わず、すぐにでも続篇(前作の続篇なのか?)が観たくてたまらない。
観てない人は絶対に損。映画ファンでこれを観ないという選択肢はないでしょう。
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