MasaichiYaguchi

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
女性の選択の権利としての人工妊娠中絶を題材に、1960年代後半から70年代初頭にかけてアメリカで推定1万2000人の中絶を手助けしたとされる団体「ジェーン」の実話をもとに描く本作は、米国で保守化が進行している今、我々に改めて問題提起する。
1968年のシカゴ、裕福な主婦ジョイは何不自由ない暮らしを送っていたが、2人目の子どもの妊娠時に心臓の病気が悪化してしまう。
唯一の治療法は妊娠を止めることだと担当医に言われたものの、当時の法律で中絶は許されておらず、地元病院の責任者である男性全員から手術を拒否されてしまう。
そんな中、ジョイは街で目にした張り紙から、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」に辿り着く。
その後ジョイは「ジェーン」の一員となり、中絶が必要な女性たちを救うべく奔走し始める。
「キャロル」の脚本家フィリス・ナジーが監督を務め、2022年・第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された本作では、主人公ジョイをエリザベス・バンクス、「ジェーン」のリーダー、バージニアをシガニー・ウィーバーが演じている。
1973年に、アメリカ連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶の権利を合法とした歴史的判決を「ロー対ウェイド事件」で下しているが、50年の時を経て、時代に逆行するかのような社会風潮になりつつある今、もう一度考えるべき問題なのではないかと思う。