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愛と激しさをもってのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

愛と激しさをもって(2022年製作の映画)
3.3
熟年男女が繰り広げる愛憎劇。
原作はクリスティーヌ・アンゴの「Un tournant de la vie」(意味は人生の岐路)で、アンゴと監督のクレール・ドゥニが共同で脚色。
原題:(仏) Avec amour et acharnement、
(英)Both Sides of the Blade 
ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)受賞。
(2022、R15+指定)

ラジオ番組のパーソナリティーを務めるサラ(ジュリエット・ビノシュ)と、元ラグビー選手で服役歴もあるジャン(ヴァンサン・ランドン)は10年間パリで一緒に暮らし、情熱的に愛し合っていた。
ある日サラは、街で昔の恋人フランソワ(グレゴワール・コラン)の姿を偶然見かけて、昔の愛情がよみがえり動揺する。
フランソワはジャンの元親友で、若いラグビー選手をスカウトする会社を設立するので一緒に仕事をしようとジャンを誘う。
疎遠になっていたフランソワが再び2人のそばに戻ってきたことで、サラとジャンの10年間の関係、それぞれの心理に微妙な変化が生まれる。
フランソワと会うことを避けていたサラだが、新会社設立パーティーで久々に再会し、熱い想いを抑えきれなくなる…。

"キャッシュ・カード"
"携帯電話(スマートフォン)"

「また始まった。愛と不安、眠れぬ夜、ベッドの足元の電話、濡れる感覚」

「いちばんツラいのは黒人とアラブ系だ。
僕たちな何者だ?マルキュスとジャンは平等な権利を持つ人間だ」

~他の登場人物~
・ジャンの息子、マルキュス(イッサ・ペリカ):母親は黒人。ヴィトリーのバンリューでジャンの母の保護下で暮らす。
将来について「販売職バカロレア」を取り企業研修を受けたいと父に言うが、父からトイレ掃除をしたくなければ「普通バカロレア」にしろと反対される。
・ジャンの母、ネリー(ビュル・オジエ)
・ガブリエル(マティ・ディオプ):ドラッグストアの店員。
・リリアン・テュラム(リリアン・テュラム):著書で述べている"白の思想"(白人が無意識に囚われる(植え付けられる)白人優越主義)について語る。
・ヒンドゥー・ダルウィッシュ:ベイルートで取材する記者。移民問題について語る。

冒頭はサラとジャンが海のバカンスを過ごす幸福感漂うシーンで、美しい映像と音楽でスタートする。
その後、ミステリアスな心理劇として展開していく。
見どころは、"愛の残り火"が再び燃え上がり徐々に抑えきれなっていくジュリエット・ビノシュの演技(体の交わりのシーンは除く)。そして、終盤のジュリエット・ビノシュとヴァンサン・ランドンの濃厚な会話劇。
なお、メインの物語は愛憎劇だが、フランス映画らしく移民問題、人種差別、親子関係などフランスが抱える社会問題が組み込まれている。そのため、全体が少し散漫になっている点は否めない、とみるか、これでよしとするか。
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