カタルーニャという固有の土地とパーソナルなコミュニティを題材としながらも、家族経営の農家が抱える問題を軸として様々な現代的イシューを内包し、身近な自分事のように観る者の心を揺さぶる。
太陽から降り注ぐ夏の空の質感、広大な大地に吹き抜ける風、蒼蒼と生い茂った桃の葉のまぶしさやもぎ取る桃の音。
豊かな自然からの贈り物のような映像がとても印象的だった。
生きることと終わりゆくことの美しさと無情さ。
その中に不変的な希望がある。
ただただ家族で幸せに暮らしたいだけなのに、それが叶わないのは何故なのか。
同じ土地で暮らすソレ家と野うさぎが共生出来ないように、抗えない何かがあるのか。
野うさぎの死の扱われ方に色々考えさせられた。
劇中歌の余韻。
世代間の隔たり。
地主と当事者世代のおじいちゃんは野菜やザクロで歩み寄ろうとしているのに対して、孫の代になると交戦的に野うさぎの死体を玄関に並べる。
なにか戦争の匂いを感じてしまう。
イリスやペレとパウも銃のおもちゃを持って戦争ごっこをしていたような。
若い世代に無意識のうちに忍び寄る戦争の足音…
本当に闘うべき相手は、野うさぎやソーラーパネルでは無く、強欲な指導者や私利私欲を貪る一部の金持ちなのかもしれない。