レインウォッチャー

Studio 666 スタジオ666のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

Studio 666 スタジオ666(2022年製作の映画)
3.0
復刊DrCU(ドラムシネマティックユニバース)⑨

ドラムの悪魔と契約したことのある者であれば誰もが一度は夢見るであろう死に方…それが《シンバル死》。
まさかそれを叶える映画があるなんて、それも名ドラマー2人が実演してくれるのだから、世の中ってまだまだ息する価値がある。

あのFoo Fighters本人たちが本人たちとして主演するホラーコメディ映画、おばかな企画モノって感じなのだけれど、呪われた屋敷でレコーディング合宿するってのは否が応でもわくわく。一応R18になってて、ゴア方面で色々とがんばっている。

とはいえ開始20分くらいで早々に退屈し始めるし、メンバーが明らかに手持ち無沙汰で棒立ちな時間とかあるし、ラストの数分は余計である。でもD・グロールはじめバンドの面々が楽しそうに殺したり死んだりしてるのは和むからまあいっか、て感じ。
この公開直後に亡くなってしまったT・ホーキンスの姿が拝めたりもするわけで、月並みな言い方になるけれど、本当に何が起こるかわからないよねって気持ちにさせられる。グロールはNirvanaに続いてまたもやバンドメンバーを亡くしたことになり、その胸中は想像に余りある。

それに、折々で挟まれる演奏シーンはさすが本職!といったところ、よくある音楽映画のそれとは明らかに違う腰の入り方で、やっぱりかっこいいのである。そしてFoo FightersといえばグロールとホーキンスというWドラマーを擁したバンドであるが故、ドラマー視点ではにっこりしてしまう瞬間が多々。

屋敷についたグロールがグレッチのセットを試し叩き(ちょっと『Scentless Apprentice』ぽいパターン)する音が本当にクラシックな良い音だったり、ホラー映画らしいスケア音にシンバルチョーク(※1)が使われてたり。

ハイライトは、悪霊に憑かれておかしくなったグロールがホーキンスに延々とドラムを叩かせるシーン。「俺とお前は同じドラマーだから通じ合えるだろ」みたいなことを言ってて、別にシリアスなシーンでもないのにまさかって感じだがグッときたぜなのであった。

そんなこんなで手軽に片手間視聴しつつ、なんだかんだ久々に爆音でFoo Fightersを聴いてしまったりしたのだ。アルバムは『Wasting Light』が好きです。

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案の定というか、ロックファン接待みたいなこまごまが転がってる映画でもある。Pearl Jam High Five!!とか、2112の2112倍とか。
中でもローディ役にケリー・キングさん(SLAYER)がいて、しかも早々にあんなことになってしまう扱いがいちばん笑った。丸くなったのか昔から丸かったのか。

あと、しれっと俺たちのウェンズデーことJ・オルテガも出てて、また目を黒く塗られている。かわいい。

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※1:シンバルを叩いた直後に手で音を止める奏法。ドラマーという生き物が「生きてる」って実感する瞬間でもある。