アラシサン弐

PLAN 75のアラシサン弐のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.3
決して他人事ではないかもしれない世界ゆえの緊迫感で倫理観を揺さぶってくる。
プラン75が「義務」ではなく「制度」であることが現代社会の辛辣さを象徴している気がする。

監督がインタビューで「社会的に生産性の無い人間を切り捨てようとする社会の不寛容さに対しての憤りを感じる」と仰っているのがとても腑に落ちる。

失業や病気、現実で言えばコロナ禍の自粛要請やワクチン接種、あげく人間が歳を重ねていった姿に対しても「自己責任」で片付けられてしまう世間に対して、「死」という極端な道を自分で「選ばせる」ことを良しとするような、歪な世界が訪れることへの警鐘を鳴らしていると思った。

そんな世界で、高齢者がプランそのものに対して批判したり真っ向から抗う訳でなく、どのようにして選択していくかを丁寧に描いているのがいかにも20年代の作品らしい。

あと個人的には、「死」を提供する側の若者達の描き方がとても良いと思った。
お願いベースで「死」を提案し、誘導し、その後始末をする若者達が、知人や時間を共にした人がプランの当事者となることで、高齢者が犠牲者であり、自分が殺人者である可能性に気付いていくのは非常に揺さぶられた。

また皮肉なことに、高齢者の肩身が狭くなった世間だからこそ、ミチ達の何気ない生活がより健気で美しいものに見えてくる。
なんというか、コロナ禍で世間から叩かれながらも何とか生きるために営業している飲食店の姿とも重なる部分がある。

みんなもっと他人に寛容になろうな。
アラシサン弐

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