どらどら

PLAN 75のどらどらのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.8
「お年寄りは寂しいから」

なんと居心地の悪い映画だろう
その居心地の悪さは
この制度の不気味さゆえなのか
はたまたその杜撰さゆえなのか
この制度をフィクションとは言い切れないこの社会なのか
そして、自分の中にある「役立たない」ことへの「蔑視」か
居心地の悪さの正体に、向き合わざるを得ない

この映画は「逸脱」の可能性を提示する
「お国のために死ぬのを誇りとする」精神も
「若者の未来」のために死ぬ精神も
「生活のために死ぬ」精神も
それらからの「逸脱」こそが救済なのではないか

ラスト、すべての人間はなんらかの「逸脱」を示す
それこそが人間なのであり
その生の美しさなのである
_________________________________
早川千絵が「十年」から4年を経て世に放った同タイトルの作品は、彼女がこのテーマをより熟成させてきたことが良くも悪くも伝わる作品となっている。
正直、この尺に比べてテーマを詰め込みすぎた感は否めないと思う。結果、それらがどうしても最後まで調和しきれず、ぼんやりした印象を残してしまっている面は間違いなくある(無論、ラストの逸脱がキーとなって立体的に立ち上がってくる構造を作り手が狙ったことはよくわかる。しかし、その狙いが十全に果たされているか、というと首を傾げざるを得ない)

それでも、このテーマと向き合い続けてきた早川さんだからこそ撮れた作品だと思うし、その点だけでもこれは成功なんだと思う。
特に、外国籍の女性が死体処理をする、という新たな展開はとても見事だし、彼女を介して切り込まれるこの世界のグロさは、今映画にする価値のあるものだったと思う。
磯村勇斗がスピード違反で捕まる、その意味も考える価値のあるテーマだ。

しかし相変わらずの打率10割俳優、河合優実はさすが
あの短い出演ですべて食ってるといっても過言ではない
彼女のラストの表情は、賛否あるかなとは思うけど、この作品があくまでSF要素を持たざるを得ない以上、これが私たちの問題であると示すには必要なシーンだったのではないかと思う。

倍賞千恵子さんはしかしほんとに声がいいですね、、
ボーリングシーンはなんだか泣けました
どらどら

どらどら