Yuri

PLAN 75のYuriのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.2
鳴り物入りのスーパールーキー早川千絵監督作を初見。冒頭からゴリゴリの海外映画祭狙いのオンパレードで今の国内視点と大幅にズレ、海外から観た日本になっていて、ちょっと引きました。元々の監督の持ち味かも知れないけど、そうではなく寄せていて、それを感じさせてしまうのなら違うと思う。静かに淡々と進むので結構中だるみしていて、その中に黒沢清監督っぽい演出があったり。日常の中でジワジワと死が近づいてきて、何かがきっかけとなり生きることを諦めてしまう怖さがそこには在りました。私は戦後の厳しい時代を生き抜き、この国を支え押し上げてきた高齢層の方々(私の祖父母世代)を尊敬しているし、感謝しています。だから、国が主体となって彼らに「生きるのに肩身が狭い」なんて思わせたら絶対駄目です。そんなに泣きそうになる。前向きな自死というのはあるかも知れないけれど、これは違う。幸せだって思いこまなきゃ壊れちゃうから自発的に思い込み催眠にかかっているだけ。それを自分の意思だと彼らは言う。こんなんじゃ気づいたら戦場にいたなんてことになりかねないし、諦めは美徳じゃないです。ただ、本当に死にたい人にとっては、いつでも苦しまずに死ねる手段があるというのは救いだとも同時に感じた。でも、どうしても死にたいと願う安楽死と政治の中で「皆で死ねば怖くない」と発破かけられ迷いながら列に並ぶ推奨死は全然違う。そしてここにも貧富の差が。安楽死は今の世界ではお金持ちでないと出来ない。逆に推奨死はお金が沢山あったら選ばないと思った。なんだら延命にだってめっちゃお金をかけると思う。75歳で誰もが死ぬなら、若い頃からの生き方すらガラリと変わってくる。そういう意味では死は本当に神の領域なのだと思ったし、いつ死ぬかわからない、いつまで大切な人たちといられるかわからないからこそ、人は生きることにすがりつき、必死であればあるほど人生は輝きだすのだ。そして、瑤子(河合優実)の動揺に、何が起きているのか、何をしているのか、その実態を知るには、当事者、関係者としてその場に立つこと以外、本当に意味で相手を理解し、思いやることは難しいとあらためて気づかされました。まだ幼さが残る20代の子にこんなことさせたら駄目だよ(>_<) ラスト、PLAN75の実態のリアルさと登場人物たちの運命が自然に綺麗に交錯するのが見事だった。倍賞千恵子さんとミチの人生が重なり合い、彼女の凛とした美しさから彼女が歩んできた人生の片鱗が垣間見え、匠の名演でした。早川監督が注目されてるのもよくわかりました。このクオリティーなら次作も観てみたいです。
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