一見理想的に見える「PLAN75」という制度。
映画の中ではどうしてそういう制度になったのかは詳しく描かれていないが、高齢者社会になってしまった日本の未来を良くするということらしい。私もうっかり良いシステムなのかもしれないと思ってしまいそうになった。
しかし、物語が進んで行く中で少しずつリアリティを帯びてきて、個別なケースに触れていく。そして、この一見理想的に見える尊厳死へ導くシステムの歪みが見えてくる。
登場人物の一人一人に誰も悪人は居ない。
市役所の職員も、高齢者施設から転職したフィリピン人も、みんな真面目に仕事をこなしているのだ。
そして、ラストシーン。正直もやもやしたままだ。
しかし、これは決してハッピーエンドではないし、いろいろなことが解決しないままだ。大きな波にのまれていく中でとかく無視されてしまいがちな個人の尊厳。
考えさせられる映画だった。
