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PLAN 75のdendohのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

完全に現代劇の様相だが、ジャンルはSFらしい。75歳以上向けの安楽死制度なんて、こんなに近い未来に実現しそうなディストピアは今まであっただろうか。というよりも、PLAN75の制度がないだけで、この映画の雰囲気自体は現実に醸成されているものと感じた(ホームレスの排除ベンチの描写など)

『集団自決』発言の成田悠輔、日々高齢者叩きに勤しむ たかまつななといった文化人、自己責任論で全てを語るネオリベ政治家等を見ていると、本当に実現しそうな怖さがある(特に大阪に巣食うあの政党が国政を担うようになったら...)

プラン75の施設にフィリピン人が勤務するのも、今の時点ではリアリティある(日本が円安傾向のままフィリピンが経済成長したら、来てくれなくなりそうだが)。国家が一人の人間を死に追いやる負の施設で働くのは、異国から出稼ぎに来ている人々。日本人は自分の国の汚れ仕事をやらない。

キャッチコピーに『果たして、是か、否か』とあるが、こんなものは否一択だし、作品としても『否』の立場から作られている。社会制度を整えるならば、安楽死制度ではなく、高齢者が死にたくなるような幸福な社会を作るべき。生きる事が後ろめたくなるような社会なんて間違ってるよ。

だってね、倍賞千恵子を始めとする高齢者は、自由意志で『死』を自ら選んでいるように見えて、ただただ選ばされてるだけなんだよね。仕事を失い、家が見つからず、挙げ句に孤独死した知人を発見してしまったら、そりゃ誰しもああなる。生活保護にしたって制度としては存在するが、『生活保護は恥』の文化もあるので、条件以前の心理的な受給ハードルは高い。負い目を感じて死を選ぶのではなく、選ばされてるんですよ。(この映画の安楽死だけでなく、大半の自殺がそういうもんですわ)
本当にゴミ制度。でもそのうち安楽死制度は何かしらの形で実現しそうだな。その時にはこの映画を引き合いにして反対の声を上げたいものだ...


さて、短期間のうちにロストケア→茶飲友達→プラン75と、高齢化社会を描いた映画作品を見て回ってきた。これを中和するには、漫画作品の傘寿まり子、海が走るエンドロール、メタモルフォーゼの縁側あたりを読むと良かろうと思う。これら作品は、活力みなぎるお婆さん達が主人公だ。そして常に若者との交流を伴って描かれる。理想論だが、これらこそが本来のあるべき高齢化社会。若者vs年寄りで社会を分断させてはいけないよ。年齢はスペクトラムであり、緩やかに社会は繋がっているのだよ。
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