ゆずきよ

PLAN 75のゆずきよのレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.0
これは近い将来訪れる、遠く無い未来の話なのかも知れない。
是か非かで言えば、私は非の側の人間なのだけれど、それは単純に私の偽善者としての矜持によるものだと思うし…いやそんな事より先ずこの映画の話をしよう。

物語は、ある凄惨な事件の影響もあり可決された「PLAN75」という法案。それは75歳以上が自らの生死を選択できるという法案だった。
視点は、市役所職員、外国人労働者、当該の高齢者という3点から。
法案自体が可決されてどれくらい経つのか、細かい仕組みとしてどうなのかという所は、なんとなくしか描写されていないが、世間には受け入れられている様子。
前半は、それぞれの立ち位置やこの制度との向き合い方などを主軸に生活を描く。
あまりの生き辛さに胸が痛くなり、後半1時間の前に一度ブレイクを挟む。
この映画の何が良いって、この仕組みがおかしいから戦おうって映画では無いという事。
役所やコールセンターで働く人は、当たり前に業務するし、それは決して悪では無い。
ただそこには人の生死が関わっていて、少なからず影響を及ぼしている。
これどうやってまとめるのかな?と思っていたが、個人的にラストの展開には納得がいかない。
言いたい事は凄くわかるんだけど、非常に残念でした。
気に入ったフレンチのコース料理のデザート後に、シェフのオススメですってホウレンソウのおひたし出された気分。

テーマは本当に根深くて、倫理観や基本的人権の関係で実際には難しいと思うのだけれど、私個人としては無しでは無いけど賛成はしたくありません。
これを許してしまうと、自死であるだとか、安楽死という制度をも認めなくてはいけなくなってしまうから。
ただし、劇中で表現されている高齢者ってのは本当にマイルドな方で、もっと大変な生活をされている方がこの国には多くいる。
しかもこれからもっと増える予定です。
そこに対する打開策があるのかと言われればもちろん無いし、この制度を認めないって言うのは私のエゴで、苦しんでもう生活が出来ないって高齢者の方が自ら選ぶのなら…という気持ちが無い事も無い。
私だってそんなに先じゃなく仲間入りする訳だし、誰だって歳は取るのだから。
私は、ご高齢の方が少しでも楽に生活できる様な仕事をしているので、目の届く範囲の方だけでも、安心安全な生活を送る事が出来るように最善を尽くします。
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