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レイジング・ケイン ディレクターズ・カット版のRのレビュー・感想・評価

3.8
はじめて見たのは思春期真っ只中の多感な時期でした。その後一体何回見たか分からない、我が人生に多大なる影響を与えた偏愛の一作レイジングケインに、何とディレクターズカットがあるではないか!ということで早速Blu-rayを購入! が、しかし内容を確かめてみると、ディレクターズカットではなく、別のエディターさんが元の脚本どおりに近い形に編集し直しデパルマ監督のお墨付きをもらってBlu-rayにてセット発売になったもののようだ、よってディレクターズカットとは言えない、むしろ劇場版がディレクターズカット。はい、デパルマ作品を歪んだ性癖で愛してる人にはやっぱ劇場版の方がいいな、と思った! 何が違うかというと、こっちの方が言うたら普通の映画の進行なんですね。大きな違いってほぼ冒頭の始まり方だけだと思うんやけど、オリジナル版はいきなりとんでもないサスペンス描写からはじまるんです。子育て中の親からしたら悪夢でしかない。カーターというきもい男が友人の子どもをさらうためにその友人をクロロホルムで眠らせたら、突然ぐったりしすぎて車のクラクションに頭があたってビーーーーーーーーーー!!!けたたましく鳴り響くところに、ふたりのジョガーが通り過ぎ……ってところに突然ケインが姿を現し、キスをしな!とアドバイス、ぶちゅうとして事なきを得るという、いきなりクライマックスかってくらいスリリングなところから始まるもんだから、その後の迷宮の如きめくるめく夢の描写も相まって次から次にすごい吸引力だな! となるのですが、こっちはカーターの奥さんジェニーが雑貨屋さんでバレンタインの夫へのプレゼントを選んでいるシーンから始まります。と、気づけば横に昔の恋人ジャック(イケメン)が立っているではありませんか。おっちょこちょいな(?)彼は雑貨屋さんにホテルのカギをそこに忘れて去って行き、むふふ❤️とジェニーはジャックのためのプレゼントを買ってホテルに侵入、引き出しにプレゼントを入れ、カギを返すため公園でジャックと落ち合って、互いに欲望に抗い切れなくなり青姦にはげむふたりを…………遠くから何者かが見つめている………!!! というノリノリ不倫メロドラマから始まります。そこから夢の迷宮シークエンスになり、そのもうちょい後に、オリジナル冒頭のスリリングなシーンがやってくる。だんだん熱していくこっちのパターンは、よく言えばじわじわ盛り上がる、悪く言えばパンチが弱い。この順序にしていちばん個人的にビミョーになったなと思ったは、ジェニーがジャックと恋人関係になっちまった過去の回想シーンへのつなぎ方。ここだけ唐突にジェニーのナレーションが入るんやけど、ナレーションが入るのがここだけやから、全体からかなり浮いてしまっている気がする。このナレーションってオリジナルあったっけ?なかったような。あってももっと自然だから特に気にならないかったのか、後日また確認してみよう。そこからはおおむねオリジナルと同じなので、控えめに言って最高です。映画ってどんなものも初めて見るときが一番長く感じられ、その後は回数を重ねるたびにどんどん短く感じるのにいつも不思議な気持ちがしますが、本作は殊更めちゃめちゃ短く感じる。おそらくその理由は、次から次にノンストップでデパルマパンチをお見舞いされるからじゃないでしょうか。はじめて本作を見たときはマジ怖くて、震えあがって、途中で見るのをやめるくらい怖かった。この手のサスペンスでそこまで怖がらせるってなかなかないと思うんやけど、オリジナル版のスリル→迷宮→女の絶命顔がひたすら怖い→カメラに映る憤怒の女←一度このタイミングでストップしたのまだ覚えてます。あと、警察署のすごい長回しで本作のネタ明しの説明を延々と追いかけるシーンも思春期の僕には衝撃的でした。人間ってトラウマがひどくなるとそんな状態になってしまうのか!とヒューマンマインドの不思議に驚愕したものです。あと、やっぱり何度見てもおもしろいのがくるくる変わるジョン リスゴーの演技。ほんま癖が濃厚でおえっ🤮てなります笑 その妻を演じるロリータ ダヴィドヴィッチは、顔の印象よりも声が高いのが毎回違和感を感じています笑 そして思春期の僕がもうひとつ本作で衝撃を受けたのが、妻の不倫相手のイケメンが普通に寝てるときに全裸であるとこ。男性が寝るとき全裸であるのを見たのは本作が人生はじめてで、野獣のような豊かな体毛をさらしてそんなエロい寝方する人があるものか! と嘆息したものだが、その後いろんな映画でそういった慣習を幾度も見ているうちに、自分もやるようになってしまって、逆に着衣だと若干寝づらく感じるという不便な体になってしまったわ。そして終盤、本作のクライマックスは、デパルママジックてんこ盛り、盛り盛りで、見てるこっちのリアクションまで映画に合わせてスローモーション! うわーーーーーーーーーーー! と野太い低音で思わず手を伸ばしてしまう。からの戦慄のラストショット! 素晴らしい!!!👏 演出盛りすぎて下品でチープな感じになりすぎという意見があるのもわかるのですが、それだからいいのです。それがいいのです。まだご覧になっていない方は、ご自分の高尚レベルをガン下げして、下劣な愉しみを貪るつもりでご覧ください。ぜったい楽しめると思う! ちなみに、「ディレクターズカット」より断然オリジナルをプッシュいたします! 正直ディレクターズカットはふつーやわ。さて、僕はこれから脳内でオルゴールをプレイしながら食事でもとろうかと思います。では、また👋
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