このレビューはネタバレを含みます
ほとんど顔を映してもらえないにもかかわらず、透明人間役のクロード・レインズがとてもよい仕事をしている。ともすればフワフワしがちな(そして実際行き当たりばったりな行動が多い)透明人間の人格が、あの美声を柱になんとなくしっかり固まっているように思えてくるから不思議だ。
扮装を解いて正体を現してから(透明なので現れてはないのだが)のハッチャケぶりも絶妙なヤベー奴感が出てて楽しい。宿屋の女将の怖がり具合が度を越しているのも面白い。旦那が「うるさい」と言った時には爆笑してしまった。
後は警察官たちのどこまでも泥縄式の捜査も健気で良い。色をつけるとか匂いを辿るとかいう手をなんだかんだ理由をつけて却下した上で、手を繋いで輪を狭めていく作戦を愚直に繰り返すのが実に可愛い。これはクラシックになるのも宜なるかなというような、魅力溢れる作品だった。
さるにても欧米の透明人間のあの根本的な邪悪さは、どういうあたりに端を発しているのだろう。人に見られないとなったらタガが外れるというのは恥の文化圏的にはまあ納得できることではあるのだけど、アメリカでもそれは同じなのだろうか? まあまずはウェルズの原作を読めという話なのですかね。