ペンギン侍

ドント・ウォーリー・ダーリンのペンギン侍のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

男性に女性は従い、かしずく、古きアメリカの時代。理想化された女は、男に支配され、一人では到底生きられない。

50年台の家父長制のアメリカ。家事はもちろん、美しくありつづけるのは当たり前、夫を慰めささえ、帰ってくる車の音が聞こえるや否や、グラスに入れたウイスキーを差し出し、その場で身体を求められれば応じる、50年代の女。
わざわざ現代の記憶を消され、この街に連れてくる理由は、“まだ何も気づいていない女”にする必要があったからだろう。家父長制下の女たちは気づいてない。あなたは、仕事をして一人で生きていける能力ごあることを。あなたにはチャンスがなかっただけで、何にでもなれるということを。

ただその一方でこの街での暮らしを選ぶ女性もいる。お隣さんのバニーがそうで、現実世界では子供に恵まれなかったとか理由はいろいろ想像できる。現実社会でも傷ついた女性としての役割を求められたからこのバーチャルの街を選んだのではないか、という読みがありなるほどと思った。

昇進お披露目パーティで、ご褒美にと、バーレスクの女の裸体が差し出されるおぞましさには震えた。あの雰囲気に耐えられなかった。男と女(男はタキシードに対し、着飾った女たち)のペア描写が凄まじく、この時代にはこの組み合わせしか是とされなかったのが感じられた。

医者だったアリスが、身勝手な弱者男性の恋人に人生を奪われるも、自分を取り戻していく爽快なストーリーだった。「あなたは私の人生を奪ったのよ!」と叫ぶピューの演技が忘れられない。支配されながらも好きな人といる人生を選ばず、自分の人生を選んだのが、クレバーなアリスらしい選択だったと思う。

きっと「前の関係:あり」が ではなかった男は自分の理想の女を拉致して…みたいなこともあったのかな。きっと、アリスは現実世界で目覚めたら隣には死体。記憶も消されてるから自分を思い出すところから再スタートするんだろう。

セックスシーンが多いなぁと思ったけど、ブックスマートの監督だからきっと意味がある!と思っていたらやはり意味があり、安心した。
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