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TOKYO レンダリング詞集
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『TOKYO レンダリング詞集』に投稿された感想・評価

記録漏れ
かな
4.0
「メモワール市川準最終章、エピローグ」

 市川準監督が、2008年9月に亡くなった。本作は、市川監督のパソコンに遺されていた、HDカメラで撮り貯めていた映像に、市川監督自身の「詞」(コトバ)を載せた映像作品である。

 「buy a suit スーツを買う」を観た時に感じた、死の予感。その予感が、本作を観ると、より確かな実感として湧いてきた。

 東京の風景を映しているショットの数々に詞を載せている。例えば、昼夜の街に顔をぼかした人々が歩く映像にかぶせた詞。自然を映してかぶせる詞。それらの映像と詞が、23分の時間の中でゆっくり重なっていく。

 それらの映像を観ながら詞を読んでいくと、監督自身の飾りのない、丸裸の本音を綴った詞に思えてくる。そこには、現在の自分の在り方、見られ方に対する想い、東京の街への想い、東京を生きている人々への想い、自分の死に方を望む詞も見られる。

 その詞たちは、なにか希望を持って明日も生きるという、活力を感じられない。どこかに望みが欠落したように、落胆した想いが強く伝わってくる。それは、東京の無機質な街並みの変化であり、東京で生きる人々が、低成長時代に突入し、閉塞感に身悶えしながら生きる余裕のなさに、市川監督の「絶望感」がにじみ出ているように感じてならないのだ。そして、何故、自分のパソコンの中に映像を撮り貯め、詞を載せていたのか。

 1987年の「BU・SU」でデビューして以来、「大阪物語」を除けば、東京で生きる人々の人情や優しさを、映像を重ねる独自の手法で魅力あるものとして描いてきた。特に1950年代の漫画家たちを描いた「トキワ荘の青春」は、古き良き東京を叙情豊かに描き出していた。2007年の成海璃子、前田敦子W主演の「あしたの私のつくり方」で初めて「イジメ」を描いたときに、ちょっとした戸惑いを憶えた。

 どこか「負の」方向に作品が流れていった、という感覚だ。そして、私が絶望感を抱いた「buy a suit スーツを買う」に続いた。本作は、市川監督がどの時点で撮り貯めた映像と詞なのかは、はっきりしない。ただ、2005年の「トニー滝谷」、2006年の「あおげば尊し」から「死」というイメージが描かれていた。そこに、自身の「死」と東京の「死」を予感していたのではないかという、思いを抱いてしまう。

 あまりにも若すぎる死であった。しかし、市川準監督が、私にどこか「死」の予感を抱かせていたことが、「TOKYO レンダリング詞集」で実感になったのだ。
「buy a suit スーツを買う」の併映。25分。市川準のパソコンに残されていた作品。撮影・編集市川準のドキュメンタリー。  ユーロスペースにて