まぬままおま

世界で戦うフィルムたちのまぬままおまのレビュー・感想・評価

世界で戦うフィルムたち(2022年製作の映画)
3.0
亀山睦実監督が自身の長編自主映画を映画祭に出品した様子と日本のインディペンデント映画の課題を映画監督や関係者にインタビューするドキュメンタリー。

亀山監督が通訳なしでも英語で受け答えしながら海外の映画祭に挑戦する行動力は凄い。
深田監督のインタビューで、日本の年間の作品数がフランスの2倍以上なのは驚いたし、それだけ各作品が低予算で作られているという意味なんですよね。

日本の映画界がメジャーとインディペンデントでパラレルワールドになっているのは、東宝・東映・松竹に資本が集中し過ぎているからで説明がつくと私は思っている。実際この3社は本作で一切の言及がなく、戦うべき“敵”であることが本作の意図に反して明示されてしまっている。
民間資本が半ば寡占状態の日本で、フランスや韓国のような政府のセクターがつくれるか、難しいからこそ戦わないといけない。それは各作品の予算規模を大きくしたり、マーケティング調査費や宣伝費に充当することができたり、興行会社にも支援が拡充されたりといった個別具体的なものではなく、広く日本の映画文化を発展させるために。それこそイ・チャンドンが、文化観光部長官になったように映画監督もアクションを起こさなければいけないと思う。

もう一つ本作の主眼が、映画監督が予算を獲得して海外の映画祭で評価されるような映画を作り、それで生活できるためにはどうすればよいかであることは、百も承知だが、地方の映画館や映画界の人々を軽視し過ぎだとは思う。地方の映画コミッションだって、ホームページを英翻して、海外にも周知しようとは思っているはずである。けれどそれは能力ではなく予算の問題である。また地方の映画館の現状と言えば、ミニシアター系の映画館はほとんどなくシネコンばかりである。インディペンデントの映画なんて上映されないし、本作の存在さえおそらく認識もしていない。だから海外や配信志向になるのも無理はないが、それで日本の観客が増えるとは正直思わない。それも能力の問題ではなく、映画界の問題であるが、個別の監督や作品がどこまでできるか全く分からない。

結局、アートマネジメントしようや英語を勉強しようといったことを解決策にするのは、とてもリベラルでよいように思える。だが日本の映画界の問題を個人の努力に回収してしまい、「神が勝利を与える」とは到底思えない。だからラディカルな戦い方を。その手がかりを探るため、私は60年代の闘争に向かうのであった…