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僕らの世界が交わるまでのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)
3.0
【ジェシー・アイゼンバーグ初長編監督作】
『Manodrome』でジェシー・アイゼンバーグへの関心が高まったので、勢いで長編監督デビュー作の『僕らの世界が交わるまで』を観た。ジェシー・アイゼンバーグは実存をめぐる葛藤のドラマに出る傾向があるだけに、本作もその流れを行く作品となっていた。

部屋に引きこもりライブ配信をすることで承認欲求を満たすジギー。家族は彼のことを心配しながらも、なかなか腹を割って話すことができない。真面目な母エブリンはDV被害にあった人のためのシェルターを運営しており、人の面倒を見るのは得意なように見えるが、息子とどう接したら良いのか分からない。そんな二人の葛藤を仄暗い空間の中描いていく。両者は場所によりペルソナを変えており、それが妙に生々しい。特にジギーは、ライブ配信時こそ自分を良く見せようとするが、それが終われば暗いオーラを纏う。そんな停滞を描いていく。正直、ジェシー・アイゼンバーグが演じるこの手の作品は『恐怖のセンセイ』をはじめとし、トリッキーな演出の中で自問自答を魅せ、それが面白かっただけに、予想の域を出ない本作は肩透かしを食らった。しかし、監督は1作目に全てを込めるとよく言われるように、彼の演技の核となるものが映画として外部化されたといった点では重要な作品といえよう。

2024年のサンダンス映画祭では監督2作目"A Real Pain"が出品される。犬猿の仲である従兄弟と、叔母を偲ぶポーランド旅行で再会をする内容とのこと。スケールアップした作劇に期待である。
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