千年女優

ザ・ホエールの千年女優のレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.0
リモートで姿を隠して英語を教える男性で、家庭を捨ててまで愛した同性の恋人を亡くして現在は生活に支障が出る程の肥満に悩まされるチャーリー。唯一の友人で看護婦のリズからの忠告も聞かず通院を拒んで『白鯨』に関するあるエッセイに読みふける彼が、死期を悟って離婚以来疎遠の娘エリーとの再会を望む様を描いたドラマ映画です。

『レスラー』『ブラック・スワン』で狂おしい程の没頭を描いて評価を高めて近年は『ノア』『マザー!』と宗教的世界観を表現するダーレン・アロノフスキーがサミュエル・D・ハンターの舞台劇を映画化した作品で、600ポンドの巨体を演じたかつてのスター俳優ブレンダン・フレイザーを盛り立ててオスカー主演男優賞をもたらしました。

かねてより望んでいたとの通りアロノフスキーが好みそうな様々な要素が「ありのまま」の功罪という主題に観念的に集約する物語で、それを終わり迫る男の再生で描きます。このあからさまな象徴性が折角の「生身」の問題を扱う美点をふいにしている感は無きにしも非ずですが、フレイザーが見せる等身大の熱演が説得力を支える一作です。
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