千年女優

かくしごとの千年女優のレビュー・感想・評価

かくしごと(2024年製作の映画)
3.5
ある事情から夫と別れた絵本作家で、長年疎遠にしていた父の孝蔵が認知症を悪化させたためにやむを得ず故郷の田舎町へと戻った里谷千紗子。ある日親友と飲みに出かけたところ、過って事故に巻き込んだ少年を連れ帰った彼女が、記憶を失った彼の身体に酷い虐待の痕を見つけて自分が母親だと偽って生活をする様を描いたドラマ映画です。

広告映像制作会社在籍時に制作した映像作品が高い評価を得て、独立後に制作した初の長編監督作『生きてるだけで、愛。』も好調だった関根光才が、SFやミステリを得意にする人気作家の北國浩二が上梓した小説『嘘』を映画化した作品で、自身もシングルマザーである杏や子役の中須翔真の熱演を奥田瑛二や酒向 芳、安藤政信らが支えます。

各要素に複数の意味を与えて展開する物語で、推進力の柱であり結末をもたらす主人公とそれ以外の人物達がつく「嘘」に、認知症の父と記憶喪失の少年による「思い出」が彩りを与えます。原作がミステリ小説故に過度に劇的に思えるところはありますが、堅実な映像と演出で「嘘」をより意味深な「かくしごと」へと昇華している一作です。
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