ザ・ホエールのれんのレビュー・感想・評価

不安定に沈みゆく巨大な悲しみの肉体はやがて難破して孤島に取り残される。死期が迫る孤独な魂は過去に犯した罪の意識に苛まれ必死に赦しを追い求める。異様さを放ちおぞましさを何重にも纏ったその姿の中に見えてくる人間味。ブレンダン・フレイザー演じるチャーリーの心の内側が静かに繊細でありながら乱暴に剥き出しになる。この物語に登場する人間は誰もが何かに取り憑かれモンスターのように凶暴で悲哀に満ちている。あまりにも複雑にぶつかり合う感情たちは行き場を失うように彷徨い癒しを求める。