少ない登場人物、ほぼワンシチュエーションで進んでいく。このシンプルな構成にして、飽きさせずに視聴者を没入させるのは、役者陣の巧みな演技力と、小さな謎の数々を少しずつ説明していく脚本の塩梅の上手さによるもの。
ストーリー自体に難解さはないのに、離婚した家族との関係性、宗教に対する多面的な見方、愛する存在を失うこと、現実逃避としての過食など、盛り込まれたエッセンスの様々な面から深く考えさせられた。
特殊メイクだとしても、ブレンダンフレイザーの役作りは凄まじかった。
何度もdisgusting (おぞましい)と言われるのに、温かい心で接し、人の良いところを見つける姿に、どうしようもなく心を打たれた。
Stranger thingsのMaxことセイディーシンクが好きで観たけれど、彼女も期待通り素晴らしかった。
親子が本気で向き合い、感情をぶつけ合うラストシーンは圧巻。
タイトルの意味や、序盤に娘が話した内容に対する伏線の回収も見事で、最後のファンタジー的な終わり方も、全てに涙を誘われた。
ダーレンアロノフスキーと言えばダークでサイコな描写を得意とするけど、今作においては温かさや明るさを見せていた。ラストシーンをあえて白い画面で終わらせたことからもそう感じた。
好きな監督ではなかったけれど、この作品はとても良かった。
23.04.15 TOHOシネマズシャンテ
