とても長いし、難解な作品ではあるが、日本人として、ノーランのファンとして、観ることができて良かった。
映像と音の使い方が印象的。特に原爆投下後に人々から称賛されるシーンでのオッペンハイマーの視界の描写が忘れられない。
もちろんノーランは戦争反対のメッセージを持って描いているだろうものの、この作品はあくまでオッペンハイマーの半生にフォーカスした作品であり、原爆や戦争のもたらす惨さを伝えることがメインではない。だから、投下後の日本の状況を描くシーンがないという批判は的外れと思う。
バーベンハイマーのミーム騒動などがあり、日本公開がなかなか決まらない中、できるだけ早く観たいと思っていたものの、実際観てみたら、やはり日本公開が7月ではなくて良かったと思う。
日本人にとって、とてもショッキングで、快くないシーンも多い。この映画を観て少なからず傷つく人は多いだろうから、わざわざセンシティブなタイミングで公開しなかったのは良い判断だったと思う。
特に、アメリカはこう思っているのか、と悲しい気分になるシーンもある。
被害者や遺族にとっては許せない思いもあるだろうけど、この映画を通じて相手がどう思っていたのかというのを知るのは意義がある。
立場が違えば考え方も変わる。どちらが正しいかではなくて、お互いの考え方を理解しようとすることが重要。それが本質的にできればあらゆる争いは存在しないだろう。
今作をアメリカ人と一緒に観た。鑑賞後に語ったお互いの感想は同じではなかったけど、その意見を交換し合えたことに意味を感じた。
豪華役者陣の素晴らしい演技は言わずもがなだけど、大統領役がゲイリーオールドマンだったのは全く気づかなかった。
24.03.29 TOHOシネマズ新宿
