やぎ

ザ・ホエールのやぎのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.4
ダーレン・アロノフスキー『ザ・ホエール』はミニマルな室内劇でありながらも、的確な撮影と編集、そしてブレンダン・フレイザーをはじめとした役者たちの卓越した演技によって、一切窮屈さを感じないファミリードラマだった。誰もが間違っていても、きっとまだ救いはそこにあるという物語。

この作品は映画館で観たほうがいいと思うのは、舞台となっている室内の照明が暗めだから。その沈鬱なまでの暗さが主人公チャーリーの罪の意識や、タイトル通りクジラのような肉体のどうしようもない重さを投影してる。この室内は海であり、チャーリーというクジラはこの海から出られるかというテーマ。

家族が互いを傷つけあったあとで、一体どんな贖罪と救済がありうるのかを、死が差し迫った300キロ近い自重の男が模索してる姿は、まともに立ち上がったり歩くこともできないもどかしさと合わせて悲痛このうえない(脚が画面に映ることは極めてまれ)。それでも最後には扉が開き、光が差す、そんな話。
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