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大いなる自由のiccoのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
3.5
なんとも新しいものをみた。
主人公は優しくて、愛に生きる人。 
色んな人と恋をしてるけど、どの人にも愛情深い。何度繰り返してもやめられない、麻薬のような衝動を止められず、塀の中と外を行ったり来たりしている。
多分彼はとんでもなくロマンチストだと思う。

そして刑務所という不自由な所で得ていた束の間の幸せが、実は塀の外の全くの自由よりも心地良かったのかもしれん。
縛りがなくなって、もう何一つ恐れることなく人を愛してもいいのだ、と言われたらそれはまた違ったのか。
不自由から生まれた想像や理想は、現実を味気なくさせてしまったかも。

ラストシーンが心に残る。
戻りたかったのはあの人の元なのか、それとも彼自身の中なのか。
後味が複雑で、色々考えてしまう。

試写会のアフタートークでは歴史的な背景について教えていただいた。
当時の西ドイツは東ドイツよりも保守的でキリスト教的な考えがあったとのこと。ドイツ帝国はフランスとの戦いによって出来上がった国で、戦争時の軍隊の中でも同性愛が広がったらしい。それもあって、こういう刑法があったのかもしれない。

柳原教授が「歴史はマイノリティからしか変わらない」、「大いなる自由は個人の中にある」と言われたのが忘れられない。
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