Ninico

大いなる自由のNinicoのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
4.0

セバスティアンマイゼ監督の長編フィクション第2作目となる『大いなる自由』は、2021年カンヌ国際映画祭のある視点部門で審査員賞を受賞。セビリア・ヨーロッパ映画祭でゴールデン・ヒラルディージョ賞を受賞。

ドイツで1871年から1994年にかけて施行された男性同性愛を禁止する法律、刑法175条のもと、愛する自由を求め続けた男ハンスの20年以上にわたる闘いを描いたドラマ。

ルールに抵抗するように同性愛を貫くハンスは性的指向を理由に何度も投獄されていた。
獄中で芽生える愛、絆をヒリヒリするような映像で観せる。

LGBTQIA+とかノンバイナリといった言葉はまだ存在しない時代の話。同性愛者が差別され犯罪者として裁かれてもハンスは執拗に同性愛を貫く。その姿を具体的に、客観的に映し出す映像の徹底したリアリティは、どんな性的嗜好の人物でも物語に惹きつける不思議な力があった。

冒頭に主人公の奔放な性行為を覗き見るようなシーンがあるが、
このシーンについて監督がインタビューでこう語っている。
『このシーンではいわゆる“第四の壁”を壊していて、観客が直接関係を持つことができる。我々は映画を作ることで、カメラの眼差しを用いてどれくらい覗き見をしているのか、それらを描く映画とは何なのか?その思いをオープニングのシークエンスに込めた。』とのこと。

衝撃のラストについて、ここの解釈はわかれるところか。ナチスの強制収容所を経験したハンスにとって抑圧され続けた時代の反体制の象徴として同性愛があったことを思わせる。はたまた、獄中の絆への彼なりの答えか。

映像も演技もリアルで素晴らしいが、男性同士の性描写が具体的すぎて(修正も入っていない)若いカップルのデートには向かないかもしれない。考えさせられる良作なので是非お一人で。

座席メモ

ル・シネマ 渋谷宮下 9F
G列8番
近過ぎずちょうど良かった。
Ninico

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