はるな

NOPE/ノープのはるなのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
5.0
ホラーかと思ったらモンスター映画だった、と思ったら西部劇だった
と思ったらこれ、映画の映画だった
読み解き甲斐ありエンタメあり
良い映画だなあ面白かったなあ

ラスト、未確認飛行物体との対決に向け立てられる作戦はまさしく映画撮影に臨む準備プロセスそのもののよう
得意分野も出来ることも異なる寄せ集め集団が、ただ一つの映像をフィルムに納めるために綿密に作戦を立てる
「長い布切れが必要、私は裁縫が出来る」
「お前は撮影助手だフィルムを替えてくれ」
「無線で連絡する、合図したら駆け出せ」
「そうしたら俺が絶対に撮ってやる」
「一番良いときだってのに邪魔が入った」
「マジックアワーだ・・・」
つってな

見ること・撮ることの加害者性、有史以来映画が孕み続けていたある種の暴力性を散々提示され突き付けられてきたからこそこの逆転がアガる
勇ましい劇伴に乗せて馬を駆る俳優OJにも、最高の映像を求め狂気の行動に出た撮影監督ホルストにも、今映画を観ている観客が感応しやすい情熱に溢れていました
そしてバカっぽさ全開の絵面にその熱を注入したのは間違いなく監督ジョーダン・ピールと撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマです
白眉は遥か雲の上で一つ目の怪物と対峙してウィンクをキメてみせたカウボーイ人形のカットです
あのシーンは舞台から構図まで完全に西部劇
映画史は西部劇史、と言われるほど映画の歴史進化は西部劇と共にありました
歴史的にもこの映画で描かれる“見る”ことの加害者性、映画の無自覚な暴力性を助長してきたのが西部劇映画です
しかし同時に西部劇は自身の功罪に対し常に自覚的であり続け、またアメリカ的娯楽エンタメの最前線に立っているからこその模索、アップデートを繰り返してきた映画ジャンルです
ジョーダン・ピールがラストの対決に西部劇を選んだのは彼が映画の可能性を信じているからだと考えると、最後の決着は映画史の負の歴史に映画だからこそ出来る回答、これは熱くないワケがない
はるな

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