しん

人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界のしんのレビュー・感想・評価

3.8
まさに狂気をまとった子供という感じの主人公(山野井泰史)でした。趣味と言いきるクライミングに命を懸け、それでいて悲壮感が漂うわけではありません。「人生クライマー」というタイトルがドンピシャですし、人生を懸けた遊びが真に美しく麗しいんだなと感心しました。

山を登るとはどういうことなのでしょうか。その一つとして、本作では難しい課題とその達成に無情の喜びを感じているという答えが示されます。山野井さんは決して金銭的に豊かな生活をしているわけではありませんが、そして身体的にはむしろ不自由なことの方が多い生活をしているわけですが、自分と比較すると圧倒的に豊かだなと思わされます。

ドキュメンタリーは自分が知らない世界の扉が開かれ、それが果てしなく遠いものであるときに感動します。今回はまさにそんな感じでした。監督も山登りや山野井さんへの知識や愛が深く、その意味でも作品の価値が高くなっています。さらにアフタートークで山野井さんの人柄にさらに惚れました。素晴らしい映画館体験でした。
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