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MEN 同じ顔の男たちのmizukiのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
4.5
A24。ホラーは基本的に苦手だけど、男女間の怨念による怖さ、からのホラーだったから割と観れた。

うーん、二人が出会ったタイミングが悪かったなと思った。平たく言えば、鈍感な女と繊細な男。真逆な方がうまくいくパターンは結構あるけど、お互いが一体化することを求めてしまったのだと思う。くっつくから、しんどくなって、離れる。妻目線になったら「そんなメンヘラな男から早く離れなきゃ…」だし、夫目線になったら「そんな理解のない妻のことはさっさと諦めろ」って思う。どちらかというと夫の気持ちの方が私はわかるかなー。あの妻みたいに無断でリンゴを取って食べたり、「別れるなら死ぬ」って言われたことを引きずって、夫が死んだ後にやっと喪失感で後悔したり、そういう鈍感な人ってあんまり、ですね…。まあ、夫みたいに好きな人のために死ぬとか、そっちもそっちで迷惑すぎて、重すぎて、共感できないけど。

夫は、妻が自分を殺したと思っている(自分を自殺に追い込んだのは妻だと思っている)。だからこそ、夫の死に涙を流す妻はお門違いに思えただろう。「なに呑気に泣いてんの?責任転嫁しやがって」って。「お前が殺したくせに」って。妻は、自分の手は汚したくないし、夫のことを助けることはない。夫側は、「だったら、お前の手で俺を殺せよ」という思考なのだろう。「手を血だらけにして、俺のことを殺してくれよ。"殺した"って実感できるように。」ってことかなと。

客観的に考えると、自殺は夫の勝手な判断によって行われたことであって妻は悪くない。妻は夫を理解できない部分があったが、相性の問題だからしょうがない。とにかく、「誰かが悪いということはない」というのが私は真実だと思っている。それでも、責任転嫁をしあう二人。最悪な結末。

結構作り手側のやりたいことを、「細かすぎて伝わらない表現」としてがんがん盛り込まれている気がしてとてもよかった。平凡な、ちょっとくさそうなおっさんの顔を複製させてるのが、不気味さを生んでいて好き。映像関係の仕事をしている人と観に行ったのだが、元の映像はめちゃくちゃ綺麗でそのまま使ったとしても相当綺麗に仕上がるのに、色のいじり方が大胆、でも美しいまま成立していてすごい、と言っていた。森の場面の緑や部屋の赤が甚だしい、とのこと。
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