アトミ

MEN 同じ顔の男たちのアトミのネタバレレビュー・内容・結末

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

89点

夕立。
とあるマンションの一室。
女がキッチンから外を眺めて黄昏てる。

(エルトン・ジョン『ラブ・ソング』)

女らベランダの扉を閉める。
女は何故か鼻血が出てる。
と、スローモーションになり黒人の男が上の階から落ちてきた。目が合う2人。
唖然とする女。


たんぽぽの綿毛が飛んで行く。
女は車を走らせ、コットソン村という田舎にあるカントリーハウスに。
エンジンを止めると同時にテーマ曲が消える(ラジオが切れた的に)。

女は庭のリンゴの木からリンゴをもぎシャクり。悪くない。な顔。
女(ハーパー・マーロウ夫人)はカントリーハウスのオーナーのジェフリー(初老。近所に住んでいる)に挨拶(初見)。
この屋敷に2週間宿泊予定。
大歓迎なジェフリーだったが食べかけのリンゴを見て「勝手に採るのは泥棒。これは禁断の果実」と怒り出す。が、冗談。
ちょっとビビるハーパー。ジェフリーは部屋を一通り案内。バスルームで「詰まりやすいから『女性は特に注意』」と注意を受ける(女性は風呂場で何を流すんだ?オリモノ?)。

ジェフリーはハーパーが「1人」で宿泊することを不思議に思い質問。ハーパーは戸惑いながらも元旦那ジェームズとの「離婚(最近で籍はまだ抜いてないし、夫人)」を匂わせた。
ジェームズは「気が利かなかった」と謝り、家に帰って行った。

ハーパーは友達(ライリー)とテレビ電話。
ジェフリーを「The田舎な変わった人」だと印象を語る。と、電波が一瞬悪くなり画像が乱れる。ハーパーはちょっと戸惑うもTELを切る。
荷物を片付けながら「屋上から飛び降りた黒人男(ジェームズ)」のことを思い出して涙を流す。


(回想)
別れを切り出したハーパー。ジェームズは「自殺する。『罪』を背負って生きろ!」と言い出し、「脅すのは酷い!」と2人は大喧嘩。


気晴らしに散歩がてら森を探索。
気分が晴れてきて山道を笑顔で小走り。
雷がなり軽い夕立。マイナスイオンに癒される。
と、トンネル発見。
ハーパーは声を出してやまびこを楽しむ。
中へと進む。
トンネル中心辺りで「ハーパー、ハーパー」と声を出しやまびこを楽しむ。
と、トンネル反対側(出口側)に人影。カラスの鳴き声的な奇声を上げながらハーパーに向かって走ってくる。
怖くなって逃げるハーパーは道に迷う。
逃げてたどり着いたのは入口をレンガで塞がれたトンネル。奇声はまだ聞こえる。
ハーパーは斜面をよじ登り、逃げる。
森の中に廃墟となった住居跡を発見。
膝ほどの有刺鉄線を超えて草原へ。ハーパーは奇声は気のせいだと考え、スマホで廃墟を撮影。と、やっぱり変な奴(裸?な中肉中背)が立ってこちらを見ている。ハーパーは足早にその場を立ち去る。


(回想)
墜落死したジェームズの死体は鉄柵に刺さり左手が裂け、頭、体にも串刺し、足は折れ曲がって死んでいた。
ハーパーはその姿を見て呆然。


カントリーハウス。
お風呂に入ってゆったりハーパー。
ライリーに送った廃墟の写真に「すごい!」の返事。ハーパーは写真をアップにしてみると「アレ」が写っており、スマホを起き、顔に水をかける。


翌朝。
気晴らしにピアノを弾いてみる(弾けないとジェフリーに言ってたが上手い)。
しっくりいかないので中断。
朝食作りを食べながらパソコンで仕事。
庭をうろつく裸男。ハーパーはTELしながら打ち合わせ中で気づかない。男は屋敷の中を覗き込む。
ハーパーはライリーにテレビ電話。
屋敷内を紹介する約束だったのでツアーを始める。裸男にはまだ気づかない。
と、やっと庭に突っ立ってる裸男に気づいたハーパー。TELを切り、警察に通報。
裸男(顔キズだらけ)はハーパーに気づき、移動。

警察に住所を説明してる間、目を離した隙にカントリーハウスのドアを開けようとしてる裸男。ハーパーは間一髪ドアをロック。が、郵便受け口から手を伸ばしてくる裸男。警察は直ぐに向かうとハーパーを安心させる。


(回想)
ハーパーはジェームズが「とても怖い」とライリーにメッセージ。それがジェームズに見つかりスマホを取り上げられる。
「何で被害者ヅラするんだ?」とブチ切れたジェームズはハーパー顔面グーパン。
キッチンにぶっ飛ぶハーパー。


カントリーハウス。
男性警官に逮捕される裸男。
正体不明の裸男。
ハーパーの証言(森からストーキングされた)から森にある古い鉄道跡で野宿していた無抵抗なただの変わり者だと推測する女性警官。

ライリーにTEL。
心配するライリーに「来ないでいい。大丈夫」だと説得。

仕事が片付き散歩。
古い教会。中に入ってみる。
石の講壇?にちょっと不気味なモチーフ(アダム?な葉っぱまみれな顔とイブ?なクパァM字開脚)。
ハーパーは信徒席に座る。


(回想)
殴られ鼻血を出すハーパーブチ切れ。謝るジェームズを「自殺しようが、何しようがもう二度と会わない!」と追い出した。


教会。
発狂ハーパー。
涙を流し悔やむ。
モチーフの影が濃くなる。

外に出たハーパー。
教会の階段に座るマリリン・モンロー面を被った男に遭遇。一応挨拶。
面男は「誰?」と質問。ハーパー自己紹介。
面男は面を取り、かくれんぼゲームに誘う。
ハーパーは丁寧にお断りするが面男はしつこく食い下がる。
と、白髪ロン毛神父が現れ面男(サミュエル。老けた少年)を家に帰りなさいと宥める。サミュエルは「クソ女」と不貞腐れて帰る。
神父は信徒席で苦悩するハーパーの力になると話しかける。

ハーパーは「どちらかと言えば苦しめられている」と答え、「経緯」を説明。殴られたのは「初めて」だと。
その後ジェームズは上の階からバルコニーを伝い、部屋に入ろうとして落下したor自殺。その時(オープニングスローモーション)目が合ったことが「苦しむ原因」だと。

神父は「あなたは理解される必要があり、私は理解している」とハーパーの膝に手を置き、慰める。
が、彼の謝罪の機会を与えなかったハーパーが「死に追いやった」と言い出す神父。「グーパンと死ではつり合わない」と。
ブチ切れるハーパーは教会を後にする。
神父はリップクリームを唇に塗り、先程までハーパーが座ってたベンチの温もりを確かめるように右手で撫でる。

森。
鹿の腐敗死体。
風に運ばれた綿毛が腐って空洞になっている目の中に入る。

教会。
気味の悪いモチーフの影。
鹿の死体に湧くウジ。
小屋の中で座っている裸男。何かモチーフから感じ取られた?のか化身なのか?額を傷つけて葉っぱを貼り付ける。
夕暮れ。

夜。
パブ。
クロスワードパズル中のジェフリー。
来店した不機嫌なハーパー。
「1杯ご馳走する」とバーテンダーのフランクリンに注文。ジロリとハーパーを睨んでる猟師?の男。

ジェフリーは教会のステンドグラスや線路跡等おすすめスポットをハーパーに教える。ハーパーは返事もせずウォッカをグイ。
と、村の警官のジミー来店。
ハーパーを心配し「真っ裸侵入者事件」をジェフリーに報告。
が、「リンゴ1つ盗んだだけ」だったからと1時間前に釈放したと聞き、耳を疑うハーパー。「リンゴ泥棒は縛り首にしろ!」と声を荒らげるジェフリー。
「ストーカーよ?」とジミーに反論するも「証拠不十分。また来たら通報して」と軽くあしらう。
ブチ切れたハーパーは「クソ野郎!」とブツブツ言いながら店を出て行く。

帰り道。
奇声が聞こえた気がして走って逃げるハーパー。裸男は遠くからハーパーを見ている。
カントリーハウスに逃げ入りドアロック。
ライリーにテレビ電話して教会での話、パブでの話をし「もう帰る」と報告。
ライリーは「せっかく行ったカントリーハウスなのにイカレ野郎のために諦めるのはダメ。私が今から3時間で行くから2人で楽しもう。イカレ野郎が現れたらあなたの後ろにある斧でチンコ切り落としてやる!」と元気づけた。
ハーパーはライリーに住所を教えるがまた電波障害。ライリーはメモできない。
と、停電。ライリーはメッセージで地図を送るよう指示。
と、何者かから「居場所はわかる。クソ女」とメッセージ。
と、電気が復帰。
と、ジミーが庭のリンゴの木の下からこっちを睨んで立ってる。
ハーパーは外に出てジミーに質問。
が、無視。
と、外灯停電暗転。
すぐに明かりが戻ったがジミーは消える。
リンゴがボトボト落ちる。
と、ブチ切れたTシャツオッサンが奇声を上げてハーパーに向かって走ってくる。
ハーパーはハウスに逃げ込みドアロック。
「何すんのよ!」とブチ切れるも無視。
キッチンで包丁を手に取り、震えるハーパー。
停電。ドアを叩く音。ガラスが割れ何者かが侵入。ハーパーは包丁を構え、廊下へ逃げる。ドアを叩く音。「武器を持ってるわよ!」とブチ切れて叫ぶハーパー。

と、「何事ですか夫人?」とハーパーを心配して中に入ってきたジェフリー。
キッチンを調べると1匹のカラスが床でバタバタと苦しんでいた。ジェフリーはカラスを楽にしてやる。
ハーパーはジミーとオッサンが襲ってきたと説明。ジェフリーはオーナーとしてハウスが安全かを確かめに外へ。
と、外灯停電暗転。
すぐに復帰。ジェフリーは「ここは安全」だとOKサイン。
庭に出て「何者か」に「私に脅しは通用しないぞ!」と脅す。返答はなくジェフリーは「もう居なくなったようだ」とハーパーを安心させる。
と、外灯停電暗転。
すぐに復帰。と、ジェフリーが消え、目の前に裸男。
恐怖で固まったハーパー。何とかゆっくり後退りで距離をとる。
裸男(全身傷だらけでトゲトゲをつけてる)は手に持ってた沢山の綿毛をハーパーに向けて吹き飛ばす。スローモーションで風に乗った綿毛がハーパーを包み、ハーパーは目を瞑り身を委ねる(綿毛の1つが口から入る)。

(スローモーション)
湯船の中で発狂ハーパー。
マンション部屋で発狂ハーパー。
森をトンズラハーパー。
マンション部屋のテーブルに講壇。
葉っぱ男のモチーフと裸男。
クパァM字開脚女のモチーフとハーパー。
葉っぱ男のモチーフとハーパー。

ハウスの中に逃げたハーパーはドアを閉める。
郵便受け口から手を入差し伸べる裸男。
ハーパーは手を握り返す。
と、裸男はハーパーの手首を掴み、引っ張る。
我に返って発狂ハーパーは裸男の手首に包丁をぶっ刺す。裸男はハーパーの手を離し、郵便受け口から手を引っ込めようとするも包丁が引っかかって取れない。強引に手を引っ込め、手が裂ける。
(スローモーション終わり)

包丁を拾い上げるハーパー。
ハウス内で物音。
マリリン・モンロー面をカラスの死体に被せて、ガシンガシン動かしてる少年。
「僕をキズつけた。こんなにされた」と裂けた左手を見せ、近づいてくる少年。
ハーパーは包丁を向けるが「刺せない」と知ってる少年はゴイゴイ向かってくる。
ハーパーは隣の部屋へ入りドアを閉める。
少年「隠れたね。10数えて」
ハーパーは10数える。
と、外のドアから神父が現れ、ハーパーを追いかける。
ハーパーはバスルームに逃げ込みドアを閉める。
と、ドアが開き、神父が現れる。
「腰を揺らすとそこから生まれたのは壊れた壁。燃える屋根と塔。そしてアガメムノン。死せる姿で」
そう言って裂けた左手を洗面台で洗う。

ハーパー「あなたは何者?」
神父「白鳥だ。いつ処女を失った?」
ハーパー「は?」
神父「その様を想像したよ。そして確信した。あなたは肉欲に熟達している。望む行為は全て探求。受け身の行為も。それがあなたの力。勝たねばならぬが勝てない。勝てぬなら失う。美は破滅と表裏」
神父は鼻息を荒らげハーパーの陰部に近き「岩、洞窟、裂け目」と興奮。
ハーパーは包丁を突きつける。
が、神父は裂けた左手でハーパーの首を締め、洗面台に押し倒し、挿入、、、ではなくハーパーが神父の腹に包丁をぶっ刺す。

ハーパーは車でハウスから逃げる。
と、ジェフリーを轢いてしまう。
パニくるジェフリー。
と、立ち上がったジェフリーはハーパーを運転席から引きずり下ろし、車に乗って行ってしまう。

立ち上がったハーパー。
戻って来たヘッドライトを見て逃げる。発狂ジェフリー。
門柱に衝突し停車。
庭に逃げたハーパーは何が何だか分からなくなり泣いて膝まづく。

と、事故車側から現れた裸男。
折れ曲がった足を引きづって歩く。
顔から枝が生えている。

と、奇声を上げM字開脚。
裸男は赤子を産み落とす。
唖然とするハーパー。赤子は這いつくばりハーパーに近づきながら成長。
マリリン・モンロー面少年の姿になり発狂。
と、少年の大きなお腹が割れ、中から左手が裂けた神父が生まれる。
ハーパーは真顔でハウスに戻る。

這いつくばりハーパーを追いかけてくる神父。
と、倒れ込む神父の背中から脱皮するように生まれたジェフリー。
立ち上がったジェフリーは泣きながらハーパーに何かを訴える。
ハーパーは暖炉の斧を手に取る。
と、ジェフリーの口から生まれたジェームズ爆誕。
ジェームズはソファに座り込み、ハーパーもその隣に座る。

ジェームズ「僕を見ろハーパー。僕は死んだ。君のせいだ」
ハーパー「私に何を求めてるの?」
ジェームズ「愛だよ」
ハーパー「、、、そっか(ため息混じり)」


(エルトン・ジョン『ラブ・ソング』)
『MEN』


翌朝。
村に到着したライリー(妊娠中)。
ハウスの庭へ。
階段に座り込む血だらけのハーパー(葉っぱをクルクル)。
ライリーに気づきニコリ。






というお話。
オープニングから好みな展開。

中々難解。
登場する男。ジェフリー、裸男、少年、神父、ジミーは皆「同じ顔」をしていてハーパーにとって「嫌な奴」。
ジェフリーはまだ「マシ」に思えるがハーパーの意見や忠告をことごとく受け入れない。夫ジェームズを含め。
違いはジェームズが黒人であること。

ハーパーはカントリーハウスに来てすぐにリンゴをかじり、ジェフリーに「それは罪」だと注意される。聖書のお話に照らし合わせるとハーパーは「原罪」を抱えた「人間」だと取れる。
アダムをそそのかしたのも「女」な訳だから「そもそも悪いのはハーパー」ということで解釈はあってるかな。
イヴのせいによりそれまで不死だった人間に寿命(死)が設定。これもハーパーと重なる。
その「罪の意識」を「女(ハーパー)に理解させる」ために男は諭す。が、女(ハーパー)はブチ切れるだけ。

神に与えられた罰に「出産」がある訳(ハーパーはこれもできてないから完全に「神に背いた女」と言える)だが、途中ハーパーは神父からの「性交」を拒む。
これは罪を理解し悟り始めた段階(人間のあるべき姿を理解。神の教えを理解できてきた)である表現かな。
この辺りからハーパーはブチ切れやスクリーム等の「感情」を消す。
目の前で「罪である『出産』」を見せつけ(男がわざわざ知らしめる)ても「無表情」。コレは『罰』の表現でありハーパーが思い描いてる出産のイメージも入っている。
ハーパーは完全に「涅槃状態」に入りジェームズの言葉(今現在の全て)を無表情で「そっか」と受け入れる。

愛が「アガペー」なのか「性行為」なのか。というと多分「性行為」かな(ハーパーは好き者)。

白人の文化(宗教)を押し付けられた「黒人が」というのに皮肉がタップリ。
てか夫以外の男はみんな同じ顔てのは「夫以外眼中無し」という愛の裏返しではあるね。



いうことで(受け入れた)ハーパーは現実に戻れましたとさ。
的なことなんだろうかな。
知らんけど。
アトミ

アトミ