【俯瞰して】
現代社会に対する皮肉を多分に含んだ作品だ。
壁の模様が人の顔に見えてしまうことはないだろうか。
これを心理学では「パレイドリア現象」と云うのだけれども、更に、そんなふうに見えていなかった人でも、そのように見えた人から、”こうだ”という説明を受けると、その話者の説明につられて、そう見えてしまうことがあって、これを「視線手がかり効果」と言うのだ。
壁の模様が顔に見えるのはよく聞くとして、心霊写真の類の多くもこれだとされている😁
この作品は、ちょっと踏み込んで単純な分析をさせないように配慮しているように思えるけれども、パレイドリア現象や視線手がかり効果と云った人の心理の弱点をうまく積み重ねて突いて見せているように感じる。
なんでもない雑音が意味のある音や、歓喜の歌のメロディに聞こえたり、水晶の原石が髑髏に見えたり、植物の実と種の断面がモールス信号に思えたり😁
僕はオカルト話好きだ。
ただ、呪いとか恨みとかそんな話が好きなのではなくて、例え怖くても、オチの無い不思議な話が好きなのだ。
古来から日本人はそうした怪異のようなものとずっと共存して、時には教訓としたり、時には執着を良しとせず諦める気持ちを養ったりしてきたように思うし、遠野物語もKwaidanも水木しげるさんのお話もそんなところが原点のように感じるからだ。
この作品は、超常現象(らしきもの)が出発点になっているのだけれども、YouTuberよろしく、これを記録してドキュメンタリーを制作して一旗あげようなんて動機付けが背景にある。
僕がYouTubeで怖い話を検索するとよく見かける日本各地の心霊スポットに行って動画を撮る人達と結構似ている気もする。
しかし、訪れる意見の相違。
そして、分裂。
さらに、お互いへの非難。
YouTubeでは今、仲違いが本当に多発しているらしい。
容易に配信が可能になった世界で、YouTubeは既にレッドオーシャンだと放送作家の鈴木おさむさんが言っていた。
そして、下積みも、経験も、知識もある人がテレビなど組織化された世界で番組を制作する方が今やブルーオーシャンかもしれないなんて付け加えてもいた。
何にでも飽和状態というのはあって、ただ、一つ言えるのは、成功する最後の決め手になるのはアイディアとか、研鑽とか、緻密な分析とか、経験とか、そういったものじゃないのか。
オカルト話のYouTubeでも、明らかに飽きさせないで楽しませてくれるのは、量よりも質を重視したチャンネルのような気がするし、案外昔から別の媒体でやっていた経験や知見のある人たちのような気もする。
この作品を難解だとする人はいるように思うけれども、リラックスしてYouTubeを観るように眺めて俯瞰してみれば良い気がする。