すずや

ナショナル・シアター・ライブ 2022 「レオポルトシュタット」のすずやのレビュー・感想・評価

-
凄……凄かった……
3年くらい前からNTLに通うようになって、その中でもとりわけ好きで再上映の度に通う『リーマン・トリロジー』にも並ぶくらいの衝撃だった。いや、自分の好み的にはそれ以上かもしれない。
19世紀末から20世紀末のウィーンに生きたユダヤ一族を追う群像劇なのだけど、その物語のなかで、ユダヤであることや宗教の対立、戦争体験の有無や誰かの死、無自覚の差別や記憶の入れ違い、様々な"この社会をマイノリティとして生きる苦しみ"を語りかける凄まじい物語だった。

セリフの情報量の多さや登場人物の関係図理解の難しさに最初は圧倒されてたけど、(人間関係図は結局最後までよく分からなかった部分も多いけど)それを上回る物語の力強さや舞台装置の上手さがあって、1955年パートにたどり着く頃までにはすっかり虜になってた。舞台装置はだんだんと簡素になっていき、WW2の略奪後にはもうほとんど何も残っていない居間が、彼らの生きた物語を象徴している。
各幕それぞれに思うことが沢山あって、止めて語り合えないのが悔しい。
とりわけ1955年パートのナータンとレオのシーンが好きだな…レオはきっとこの物語の創造主のストッパード先生だと思うけど、自分のユダヤとしてのアイデンティティを「過去の遺物」と言い切ってしまえることが、どれほどに暴力的なあり方なのか。そこが結局、この物語の意図したところなんだろうと思う。

家系図をちゃんと理解してからもう1回見直したい…!
すずや

すずや