Jun潤

アイ・アム まきもとのJun潤のレビュー・感想・評価

アイ・アム まきもと(2022年製作の映画)
4.0
2022.10.01

2022年レビュー200本目!🎉🎉

阿部サダヲ主演作品。
『死刑に至る病』での怪演凶演の衝撃から半年も経っていないのに、また違った不気味さが予告の時点でありますが、こちらは心を温めてくれそうな感じが強く、真逆のイメージがもらえる期待を込めて今回鑑賞です。

庄内市役所に、空気が読めない、人の話を聞かない、全然察せない牧本という男がいた。
彼の仕事は、孤独死したご遺体の引き取り手を探す「おみおくり係」。
しかし天涯孤独の身だったり、家族から見放されたりで、彼のデスク周りはご遺骨で満パン。
そんな時、新しく赴任してきた局長に「おみおくり係」の廃止を言い渡される。
亡くなったばかりの蕪木の案件が最後となり、牧本は奔走することとなる。

いやぁ、こういう直球で死生観を説いてくる作品はとても貴重ですし心にグサグサ突き刺さりますね。
人は死んだらどうなるのか、は解の出せない永遠の命題であり、死んでどうなったかも分からない故人のためにお葬式を開くというのは、遺族の自己満足、エゴなのかもしれない。
それでも、故人の生前の行いに感謝したり、きちんと最期のお別れをしたり、遺った人同士の新しい縁が繋がったりと、よくよく考えてみると割と意義のある催しなのかもしれませんね。

今作では、オムニバスや群像劇のように、蕪木という故人が各年代で関わってきた人に、牧本が話を聞いて、遺族同士の縁と、蕪木の人生を紡いでいく物語。

主人公である牧本の、察しが悪すぎるというキャラ付け、人のことを全く考えていない仕草が終始徹底していたからこそ、ちゃんとご遺族たちの本当の気持ち、心の底の底までを引き出す、そういう“ちゃんとした”伝え方をしている作品だったのかなと思います。

行き着く先々でトラブルを起こすけれど、異性には言いようのない魅力を感じさせ、不思議と周囲の人を惹きつけ、知らないうちに人に好かれるという蕪木の人間性は、奇妙なことに牧本と共通していたんじゃないかと思います。

皮肉なことに、彼が最期に繋いだ蕪木の縁は無事繋がったものの、牧本自身はすぐに無縁仏となってしまうけれど、牧本自身が心の中に残し続けた無縁仏の方々は見送りに来てくれた、そんな現世をも超えたご縁でもって、死んだキャラすらもちゃんと救いきった作品だったと思います。

最近のマイブーム、他の作品から言葉を借りて、『ONE PIECE』Dr.ヒルルクのセリフ
「人はいつ死ぬと思う?(中略)人に忘れられた時さ」
Jun潤

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