Jun潤

LOVE LIFEのJun潤のレビュー・感想・評価

LOVE LIFE(2022年製作の映画)
3.9
2022.10.06

ポスターを見て気になった作品。
ん?『ラブライブ』?と空目してしまったのが始まりだったものの、ヴェネツィア国際映画祭、トロント国際映画祭などへの選出作品と、止まらぬ邦画の国際化の流れにはノらない訳にはいかない。

とある団地で暮らす、妙子と二郎夫婦。
妙子の連子である敬太の、オセロ大会優勝と、妙子たちの結婚になかなか首を縦に降らない二郎の父の誕生日祝いのための準備が進んでいた。
無事にお祝いが終わった後、悲劇は起きる。
不慮の事故により敬太が亡くなってしまう。
敬太の死以降、二郎は元カノの山崎との逢瀬を重ね、再び姿を現した妙子の元夫・パクの面倒を、妙子は最初は仕事として見始める。
敬太への愛によって止まっていた二つの愛が、敬太の死によって再び動き始める。

これはいい!いい邦画であることに間違いなし。
『ドライブ・マイ・カー』よろしく世界に広がる邦画に韓国手話は不可欠。
個人的木村文乃史上最高演技。
永山絢斗が無事クズ男俳優の仲間入り。

順を追ってレビューしていくと、序盤の仲睦まじい描写の中に、義父の結婚への反対や元カノとの確執と、なかなか一筋縄ではいかなそうなホームドラマの雰囲気を感じた途端、敬太の身に起きた事故によって物語としては急降下、観る側としてはテンション急上昇!
そこを起点に、序盤の細かい描写を丁寧に回収していく流れで、見やすさはだいぶありました。

『アイ・アム まきもと』のレビューで葬儀について触れましたが、そういった区切りとは別で近しい大切な人の死というのは本当に辛い。
自分の心を占める割合が多ければ多いほど、それを失った時の“空白”も大きい。
そんな人はもはや他人ではなく自分自身そのものなのだから。
その“空白”は葬儀が終われば区切られるものなのか、仕事や生活によって“埋める”べきものなのか、向ける相手を無理矢理作って怒ってでも“受け入れる”べきなのか。
そこについて、風呂に入れるようになった二郎と、入れないままでパクに怒られたことを感謝する妙子との対比で描かれていました。

そして生活保護受給者の監視の名目でパクと再会し、彼のことを見捨てられないばかりに、二郎に内緒でパクと2人きりで会う妙子や、妙子への嫉妬の念から自分の心の中にできた闇を懺悔する山崎を、甲斐甲斐しく世話を焼く二郎。
どっちもどっちだけど、妙子が山崎のことを知らない分、二郎がパクと妙子のことを責めるんじゃないよと、無事に二郎をクズ野郎認定。

タイトル『LOVE LIFE』、「愛」と「命」。
登場人物みなそれぞれに愛を持ち、独りよがりの愛に生きている。
愛のために生きるのか、愛があるから生きていけるのか、それとも、愛ゆえに生き辛くなってしまうのか。
ラストの妙子と二郎のように、人と人との間に愛がなくとも、生きていくことはできるということなのか…。
Jun潤

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