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かがみの孤城のmatchypotterのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
4.2
年末公開から観そびれててやっと観れた。
やっぱり期待通り。良かった。面白かった。

小学生から大人まで楽しめるしっかり練られて作られてるストーリー。
原恵一監督、クレしん劇場版といえば。さすが、間違いない。

7人の中学生がわけもわからず鏡が光って招かれた断崖絶壁に聳り立つアンティークな城。
そこにはさらに小さい女の子が狼の仮面をかぶって登場し、彼ら彼女らにルール説明やらナビゲートをする。

次の3月末までに城の中にあるとされる鍵を見つけ、扉を開いた者だけが願いを叶えられると言う。
城への出入りは自由。ただし、9時〜17時まで。
それ以降に城に居残ると“狼”が現れ、食べられてしまう。

なぜ、この7人なのか。
なぜ、鍵を探すのか。
皆、何を願いたいのか。
この狼の仮面の少女は何者なのか。

この謎すぎるファンタジー設定を、とても良くハメてる。観る前からこの7人はなにやら“ワケあり”の中学生なんだろうと思ってて、実際、そこは予想通りではあったが、それは物語のベースの1つでしかない。

元のそれぞれの世界では何らかの理由で環境に馴染めていない者同士の探り合いから始まり、鍵探しも気もそぞろに、真剣なのか何なのか。

相手に同じ空気を感じ取りながら、でも、探り合いたいけどどこか臆病な面々の、ちょっとしたぶつかり合いや馴れ合いを通して、元の世界では味わえない絆を感じる。

そこからしばらくは血眼で鍵探し、よりも、7人の、7人だけのちょっとした課外授業のような出入り自由の城での生活が始まる。

非現実なファンタジーが巻き起こす城での出来事が案外普遍的で落ち着く。

皆がそれぞれ求めていたような優しく、自由で、少しずつ互いを認め合う友情。それが彼らにとってどれだけ支えとなっていくか。

この謎のゲームにも半信半疑だが、そもそも元の生活にだって疑いや不信があり、なかなかうまく馴染めてない彼らだからこそ生まれる絆や、価値観。

普段は吐き出せない思いが、それぞれからじわじわと溢れ出していく。
それを皆で乗り越えようとしていく原動力になり、それがこの物語をアツくさせる。

そして、この狼少女の存在。
ゲームや城での生活のナビゲーターに徹するかと思いきや、彼女にもしっかり背景があって、最後にそれが大きな伏線回収になってる。

7人の中学生が、7人それぞれの壁を乗り越えるための話、のさらにその先に、もう1つの話が実は進んでいる感じ。

本当によくできていて、わかりやすいけど、単純でもなく。
色々抱えた中学生だからこそ生まれる葛藤や閉塞感。無邪気な同調圧力によって傷付いた者同士にしかわからない領域で分かり合えるモノがある。

それを最終的に誰かに助けてもらうとか、願い事で解消するとかではなく、この集められた7人の繋がりの真相も含めて、7人が意を決して前を向いていく話の流れがとても素晴らしく、暖かかった。

當真あみ、北村匠海、芦田愛菜、宮崎あおい、他の声優陣、皆、とても聞いてて落ち着く。
一瞬で“彼”だとわかる高山みなみのニクい反則技、とても和んだ。

そして、この物語の真相、ゲームの魂胆、7人の繋がりの謎のヒント、は、結構最初から、いや、元の世界のあちこちに転がっている。

やたらと親切なフリースクールの先生の存在感とか観てるこっちも一緒に色々気付こうと思えば気づける。

ファンタジーだけど、すごく身近に感じる。
ファンタジーは、現実の厳しさからの逃避から生まれる側面があるが、それを体現しながら、現実にそれを還元するストーリーがとても良かった。

こういうアニメ、もっとたくさん観たい。


F:1956
M:4254
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