ありがちと言えばありがちな現代ファンタジーも、辻村深月が書くとこうなるのか、と唸ってしまった。
不登校の女子中学生の逃避先としての「かがみの孤城」。そこには他に6人の中学生がいて、隠された鍵を見つけると何かひとつ願いが叶う…
斬新な設定ではなく、何なら鍵探しもなかなか始まらない。お互いに詮索しない、居心地のいい場所としてだけ機能する城なのに序盤で飽きさせないのは、卓越したキャラクター造形と7人の関係性の卓越した距離感のせいだろう。
絶対悪としていじめっ子を配置することで、物語のフォーカスはむしろ現実世界に当てられる。
ただし、絶妙なタイミングで差し込まれる「城」のファンタジーな刺激のお陰でダレない。
そして、これまで後回しにしてきたファンタジー設定をぶん回すクライマックスと、あまりにも完璧な伏線回収となるエピローグはちょっと次元が違いすぎる。
設定が見事すぎて原作の凄さが感想のほとんどになってしまった。