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籠の中の乙女のtjrのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
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ヨルゴス・ランティモスの出世作。
ここ最近の作品でも異様な世界観と奇妙さに難解とされるものが多いが、今作は初期の作品なだけあってキレッキレ。
観客に忖度するシーンなど一つも無い。
冒頭のボイスレコーダーでの意味不明な単語説明がこの作品の雰囲気を物語っていた。

家族を家から一歩も外へ出さないという究極の家父長制は、支配者・権力者への皮肉という監督の作家性を如実に表している。
作品単体では低い解像度が、初期作によって鮮明になるという好例かもしれない。

直前に“感情を全て台詞で説明するスペシャリスト”山崎貴の作品を観たからか、ここまで説明台詞を廃したスタイリッシュな作品は歪んではいるが確かな美しさがあった。
繰り返される無音の長回しの集大成であるラストカットはあまりにも残酷。
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