試写鑑賞。
これまでの大森立嗣監督作品とは打って変わってメッセージ性が“ない”意欲作。
監督が思う“かっこいい”を詰め込む。おそらくこれがほぼ全ての映画なのであろう。
実際、ビジュアル面の楽しさはある。特報でも一瞬流れている燃えるガソリンスタンドでの最高にイカしたショットを見れただけでも大満足。
とはいえ、さすがに内容がなさすぎる。
ある一夜に起こした事件をきっかけに、登場人物たちの人生が絡み合い地獄へ向かっていくというプロットはタランティーノ作品を彷彿とさせる。
特に設定的に『レザボアドッグス』や『パルプフィクション』を想起する人は多いだろう。
のだが、悲しきかな外側をなぞっただけになってしまっている。
会話劇の中で徐々にキャラの真実を暴き出していくという雰囲気を纏ってはいるが、AからBに場面が移る際に雑に事実が提示され、それが他のキャラに影響を与えるでもなく、ただただ都合を良くするための事実にしかなっていない。
この手の作品に必要な“テトリス的気持ちよさが”決定的に欠けているのだ。
別に俺のかっこいいを詰め込みたいだけというのを否定するわけではないが、それをやるなら120分超えの上映時間は長すぎる。
中途半端にドラマっぽさを持たせたことで、結果としてかっこいいが浅瀬で止まってしまっているのは致命的な欠点ではないか。
やるならやる、やらないならやらないでどっちかにしてほしい。
それと、バイオレンス描写も妙に中途半端。より万人に楽しんで貰えるためということなのかもしれないが、そこまでやるなら徹底的に阿鼻叫喚の地獄を観せてほしかった。
今作のMVPは宮沢氷魚さん。乾いた若者が力を手に入れ狂っていく姿は凄まじかった。