シャイロックの子供たち
池井戸潤原作の小説を、オリジナル展開にした映画
監督/本木 克英
空飛ぶタイヤ(18)
で池井戸潤原作作品の映画化の経験もあって、今作でも
池井戸潤ワールドをうまく映像化している
札束をATMに追加する仕事をしている一人の男
かれは出来心で、金を自分の趣味のギャンブルにつぎ込む
結果的に大金を手に入れ、ATMに元金を追加するのだが、その作業の途中に一人の男に見られてしまう
時間は変わって
今の東京第一銀行長原支店
パワハラ上司から営業チームのお客様係の面々に営業成績アップのための発破をかけられるなか、新たに赴任して来た滝野(佐藤隆太)は結果を残していく。そんななか、以前に勤務していた赤坂支店の馴染客・石本(橋爪功)から10億年の融資の話を持ちかけられる。
同じ東京第一銀行長原支店の西木(阿部サダヲ)はマン年課長代理。
出世街道を外れているからこそ、親身になって地元の人と接している行員だった。
そんなある日、100万円の紛失事件が行内で起きる。
疑われたのは北川(上戸彩)。彼女の私物のバッグから帯封がみつかったからだ。
しかし彼女の上司西木(阿部サダヲ)は彼女ではないと力説する。
翌日。消えた100万円が見つかったことが発表される。
しかし北川への疑いが消えたわけではなかった。
そんな 東京第一銀行長原支店に査察が入ることになる。
滝田の10億円融資先の社長が失踪したためだった。
その査察作業の中で、100万円紛失事件が明るみなる……
謎を解いていくような物語ではなく、最初から犯人が誰なのかは明確にわかっているので、完成している図面のパーツがいろいろと出てきてピースを当てはめていくような展開
阿部サダヲの、マン年課長代理の雰囲気と部下に親しまれるいい上司感の演技はやはり最高。
原作とはちがってラストまでしっかりと出演。
昼行灯でありながらも、やるときはしっかりとやるという部分は観ていて気持ちいい。
彼の部下として 北川役の上戸彩もよかった。
行員として真面目で優秀である彼女の存在は、この映画の中でとても印象的である。
真面目さが全面にでているが、行員として当然のことであり、それは演技にも出ている。
玉森裕太くんはまだまだ新人感のある行員といった役どころ。
今の仕事に不満を持っていて、転職も辞さないというんは、リアルと言えばリアル。
転職を考えていながらも、やるべき仕事はきちんとする。という部分。そして西木(阿部サダヲ)の影響を微妙に受けているような雰囲気を考えると、今後の池井戸潤作品で、いつかしゅじんこうでえがかれるのかもしれない。
北川や田端の銀行員としての真面目に頑張っている姿
というのと対象的なのが、
支店長の九条(柳葉敏郎)と監査・黒田(佐々木蔵之介)
会社経営の石本
九条と黒田の会話は、どす黒い大人のやりとりであるが、これがいい意味でリアル感を引き出しているのかもしれない。
また客側であることを利用する石本のいやらしさも、社会ではよく見る光景
そういった 社会のどす黒い一面をしっかりと描いている。
そういったなか、ラスト前に覚悟を持つことで過去と向き合う姿を見せるキャラクターの真剣な表情とラスト前の表情は演出として成功している。
シナリオ全体は痛快反撃モノ…とは言い切れないところが、この映画の面白さを決めるポイントになるかもしれない
テレビドラマ 半沢直樹のような、
散々苦汁をなめた側が反撃する…というのではなく、
悪事は許せない
でも自分側も……
という
いい意味で、人間臭すぎる部分が爽快感とは縁遠いところがある
結局は 倫理をもち続けること
誘惑に駆られること
それに対して……
という部分がヘビーと言えばヘビー
しかしここまで池井戸潤ワールドがしっかり映像化してくると、
池井戸潤サーガを観たくなる
舞台の東京第一銀行は
東京中央銀行と半沢直樹の産業中央銀行が合併したメガバンク
下町ロケットは 白水銀行
アキラとあきらでは 産業中央銀行
これら銀行名が登場するなどしているので、
今回の作品でもこれらの銀行名がちらりとでてくるなど、池井戸ワールドが見えるのはとても楽しいところ。
やられたら倍返しだってな
と予告でも言っているが、残念ながら堺雅人こと半沢直樹は登場しない。
ちなみに アキラとあきら で出てきた、山崎瑛(アキラ/竹内涼真)のお父さん(町工場の社長)を杉本哲太がしており、同じ世界観だと似た人がいるのだw
と思ったりする部分は小ネタとしてあるかもしれない。
https://www.youtube.com/watch?v=ZpvcPlJYEW8