ユーライ

神は見返りを求めるのユーライのレビュー・感想・評価

神は見返りを求める(2022年製作の映画)
4.8
これまでの吉田恵輔作品から頭一つ二つは抜けている傑作。これまでは主に物語の力で興味を持続させていたが、今作は「見たくないものを無理やり見せられる」映画的な魅力を獲得してしまっている。『空白』でもカットを割らないことによる極めて優れた轢死を見せつけていたが、スマホの縦長サイズながら飛び降り自殺をワンカットで捉える感覚は最早『回路』黒沢清に接近している。田母神が発する「編集の刻みが細かくて見辛い」という言葉は、逆説的に映画の特性を言い表しているように思える。題材こそYouTuberを扱って今時のお話に仕立てているが、現代の分かり易い表層として適当なものを選んだけであり、繰り広げられるのはいつもの人間関係地獄絵図。ぬいぐるみは誰もが身に着けている内外の仮面のイメージ、それを剥いで血を流しながら踊り狂う姿には「素顔のまま血を流しながらでも生きてゆけ」という辛辣な人間賛歌がある。街中で見かける様子のおかしいオヤジに向けた哀歌、ラストショットで後光が照らす背中においてあるいは彼らのような存在こそが本当に神なのかも知れないと語る。根本敬か……?
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