金魚鉢

夜を走るの金魚鉢のレビュー・感想・評価

夜を走る(2021年製作の映画)
4.2
"人生に楽しみを見出せなくなってしまった人が送る生活"が映し出され、薄らとした生き地獄が延々と続いているような哀愁漂う作品。状況が悪化して精神が壊れていくにつれて、工場の音が威圧感のある音に変わってき、不安を駆り立てられるような感覚があった。

真面目に変わらない毎日を送ることを受け入れてきた工場の人たちが再起を図る人生観の話かと思っていたら、ある事件から隠し事を抱えたことでそれぞれの歯車が狂い出していくという流れで、展開が最後まで読めない。生きていて何が楽しいのか分からなくなることも怖いけど、それ以上に周りに信用できる関係がないことがとても怖い。その先にある精神が弱っているところをつけ込まれて、認めてくれる存在を見誤ってしまうところの怖さまでも感じる内容だった。たぶんあそこに誘われた時点で自分の中の普通の感覚は崩壊していて、あの場にいる人は弱いんじゃなくて幸せを見つけることを諦めてしまった人に見えた。きっと反撃しなかったことよりも、反撃できない自分に気づいていながら状況を受け入れる以外のアクションを起こしてこなかったことが問題。宇野祥平の教祖役は丁度良い胡散臭さで流石の仕上がり具合。弱い者を導くとか言ってるやつが多数決するの不覚にもの笑ってしまった。
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