「好き」を好きと言える奇跡に祝福を。
「普通」ってなんだろう。「個性」に正解はあるの?そんなことを悶々と考えてしまう作品だった。
重厚なテーマでありながら、全編に渡って静的でゆったりとした、とても優しい空気が流れている。まるで童話や絵本のような世界観。
さかなクン本人が演じた「ギョギョおじさん」。異常者と見なされ、子どもたちにも煙たがられる存在。あの人物は、あり得たかもしれない「もう1人のさかなクン」だったのではと思う。
周りに認められず、就職にも失敗し、外の社会で生きることのできなかった存在。それを彼本人が演じたことに、途方もないほど切実なメッセージを感じる。
ギョギョおじさんとミー坊との違いは何だったのか。
「普通」を押し付けなかった母親の存在か。ユニークさを認めてくれた総長か。「いい大人なのに」と嘲笑った恋人に抵抗してくれたヒヨか。魚愛をリスペクトしてくれた「うみひと」さんか。
人の「好き」を認めて応援できる優しさ。個性をコンプレックスにさせない思いやりの心。
女優が男性役を見事に演じ切ってみせたこの作品が持つ説得力は相当に強い。男か女か、何が好きか、どこの出身か、そんなことはどうでもいい。
自分の「好き」に正直に生きること。それをみんなで応援すること。
キレイ事ではない。それだけで、世界は幾分か明るくなるはず。