Jun潤

柳川のJun潤のレビュー・感想・評価

柳川(2021年製作の映画)
3.7
2023.01.09

ポスターを見て気になった作品。
中国・日本・韓国の合作映画。
韓国人監督が中国の人々を、日本を舞台に描く、ということで、アジア映画の中での邦画や日本人俳優の立場も垣間見えそうな感じがして今回鑑賞です。

末期ガンを患ったドンは、兄のチュンを誘ってかつての想い人・チュアンと同じ読み方をする、福岡県柳川市へ旅に出る。
そこで出会う旅館経営者の中山、居酒屋の女将、そして再会するチュアン。
1人の女性を巡る男たちの会話劇、そして人生の最期に追想する人生の軌跡。

ほぉ〜これはなかなか。
また新しい韓国映画の形を観たなという感じ。
日本を舞台にして、池松壮亮などの日本人俳優を起用していたこともありますが、個人的に画角やカメラワーク、画面の光彩などを邦画に寄せていた印象を受けました。

物語の大筋的には、青春時代に唐突に終わりを迎え、時を経て新しい人を加えて再開した、鈍く光る恋の四角関係といった感じ。
キャラクターそれぞれについてもシンプルなものでは無く、全員が誰にも言えない秘密を持っていたという共通点がありました。
病気のことや家族のこと、過去のこと。
大小様々に違いはありますが、それがあってこそ魅力的に動くキャラクターたちばかりだったと思います。

『ブレット・トレイン』の時にも思いましたが、やはり日本での公開用にも、おそらく本国での公開時にはあったであろう日本語セリフの字幕は欲しいですね。
言っていることはわかるし、中国語や英語で字幕を出されても理解はできないのですが、作品が持つ可能性を引き出すためには、やはりあった方がいいのではと思いました。

日本を舞台にして中国人が動く、国籍も言語も違う中で共通していたのは「歌」と「秘密」だったのかなと思います。
「秘密」に関しては上述の通りキャラクターの魅力を引き出すのに十分効果を発揮していましたし、「歌」についても作中で何度も流れていた通り、歌詞の意味がわからなかったとしても、そのメロディや込められた想いが通じることはあるんだなと思いました。

邦画のガラパゴス化はなんとなく感じていますが、なんだかんだ国際的に邦画そのものだったり日本人スタッフ、日本人俳優の需要というか、日本人だからこそ引き出すことができる作品の魅力というのも、まだ捨てたもんじゃないんじゃないかと思います。
Jun潤

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