南森まち

宇宙探索編集部の南森まちのレビュー・感想・評価

宇宙探索編集部(2021年製作の映画)
3.4
1990年に創刊された雑誌「宇宙探索」。かつては宇宙ブームで湧いたこのオカルト雑誌も危機が迫っていた。
編集部の唐博士は創刊時から真面目にUFO探しに取り組み、30年たった今でもアナログテレビの砂嵐から宇宙人の電波を拾おうとしていた。
彼は虎の子の古い宇宙服を着てスポンサーとの撮影に挑むが、宇宙服が脱げなくなり窒息で死にかけ、救急車が来る大事件を起こしてしまいスポンサーを逃してしまう。そして、編集部はもはや暖房の修理代すら出せない状況に追い込まれる。
そんな中、テレビが点かなくなった日に、遥か西の四川省で宇宙人らしき映像が撮影されたという噂を聞き、唐博士は取材旅行を決意する。現実的な女性事務社員と、飲んだくれのフリーの友人、熱狂的な宇宙探索誌ファンの女の子を加えた四人で彼らに会いにいく…というお話。SF(?)コメディー。

ドキュメンタリー調のつくりなのだが、行く先々で現れるのは怪しい詐欺師やうさんくさい伝説を語る人ばかり。それをクソ真面目に信じて古びたガイガーカウンターを手に右往左往する主人公と、冷めた目線のツッコミの社員のたちの対比が面白い。

荒唐無稽だが、コメディーもそこまでうるさくない、緩急の付け具合が絶妙な奇作だった。主人公を始めとした出演陣の怪演も素晴らしい。

狂気に満ちているように見えて、礼儀正しいし結婚式のスピーチで宇宙のロマンを力強く語る主人公は、多くの大人が忘れた夢を見続ける希望と、悲哀に満ちていた。

英題の『Journey to the West』が「西遊記」と揃えているのもオシャレ。