あしからず

雪之丞変化のあしからずのレビュー・感想・評価

雪之丞変化(1963年製作の映画)
3.7
長谷川一夫の女形と義賊、正反対の一人二役が見所の大映オールスター復讐劇。
変化ヒーロー物の先駆けと聞いたのであるときは中学生あるときは正義の味方のセーラームーン方式かと思ったらふつうに別人の二役だった。とはいえしなやかで優美な女形から気っ風のいい江戸っ子の怪盗・夜太郎への転身はさすが歌舞伎役者。同じく歌舞伎出身の雷蔵さまが昼太郎で対照的な命名もいい(昼太郎の報われなさかわいい)
背景を一切排除した暗闇の殺陣の舞台的演出があまりにかっこよくて白刃の輝きに痺れた。遠景からの林の撮影や若尾文子とひろみ屋の霧の中の攻防などとにかくカメラアングルと無の空間の舞台演出がたまらない。また影だけが独立して動く演出はサスペンス映画のようでヒッチコック的。

あややは薄幸の美少女役だが呆気なくて本作は山本富士子が輝いている。口の悪さが天下一品で逆ナンもこなすカッパの姉御が味わい深いし切り替えの早さも見習いたい。
俳優陣の豪華さと歌舞伎的な演出が魅力の一品。市川崑は幅が広い。
あしからず

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