りょう

非常宣言のりょうのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
3.6
 航空パニックの映画は、1970年代の「エアポート」シリーズを子どものころにテレビで観た印象が強烈でした。自分の飛行機嫌いは、そのトラウマかもしれません。
 旅客機を舞台にしたパニック映画は久しぶりに観ました。羽田空港の旅客機炎上事故も生々しい記憶のままなので、臨場感が増幅した印象です。旅客機事故で死亡する確率は、自動車事故よりも3桁くらい低いことは有名ですが、やっぱり恐怖感は比較になりません。ちなみに、新幹線は誰もが信頼していますが、あのスピードでシートベルトを着用しなくていいのかって時々疑問に感じます。
 さらに機内でバイオテロなんてことになれば、旅客機の閉塞感とも相まって、パニック映画の設定としては完璧です。そこにソン・ガンホとイ・ビョンホンという韓国のスター俳優が2人も登場するし、全編にわたってシリアスモードなので、かなり“狙った”作品になっています。映像や編集、劇伴もさすがのクオリティでした。
 ただ、中盤以降の脚本が無茶な印象で、それを演出しようとすればするほど、シリアスモードが逆効果になるような破綻が目立ちます。もう少し物語をシンプルに、120分程度の尺にして欲しかったです。
 犯人の人物像やバイオ研究の真相を深掘りするのか、乗客乗員の生命と国家の安全を天秤にかけるエゴを浮彫りにするのか、どちらも消化不良なまま、相互に物語の印象を希薄にさせてしまったようです。
 乗客乗員が未知のウイルスに感染した旅客機を着陸させないという政府の判断はあり得るはずですが、さすがに、日本の自衛隊が素性のはっきりした外国の民間機を領空侵犯で撃墜するって…。ないとは言えませんが、1983年の大韓航空機撃墜事件を想起させる意図でもあったのでしょうか。
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